トップメッセージ

スピード感ある経営で
埼玉県の成長を取り込み
経済・社会の新たな
価値を創出します
- 頭取
2024年度の経営環境
円滑な資金供給と最適なコンサルティング提供により単体の当期純利益は最高益を更新
2024年度を振り返りますと、2度に亘る政策金利引上げに象徴されるように日本銀行の金融政策正常化が進むとともに、2年連続での5%を超える企業の賃上げ姿勢の継続により「賃金と物価の好循環」創出に向けた流れの浸透が見られました。
地域経済につきましても、個人消費が牽引する形で緩やかな回復基調にあり、再開発等を背景とした地価の上昇も続いております。
企業業績については、個人消費回復の恩恵をサービス業等が享受する一方、製造業においては海外需要軟化の影響を被るなど濃淡が見られる状況と捉えております。
こうしたなか、2025年1月に発足した米国の第2次トランプ政権による通商・関税政策や安全保障体制の見直しなどが国内外の経済に影を落としております。
また、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や緊迫・拡大する中東情勢など地政学的リスクの高まりにより、先行きには不透明感が漂っている状況です。
当行では長期ビジョン「MCP Musashino mirai-Creation Plan~多彩な価値を結集し、地域No.1のソリューションで埼玉の未来を切り拓く」の第一ステージである中期経営計画「MCP 1/3」のもと、お客さまと地域に徹底して寄り添い、地元企業一社一社に対する本業支援に注力するとともに、お客さま一人ひとりのライフプランに寄り添ったニーズの発掘・課題解決に努めるなど、各戦略を迅速かつ強力に推し進めてまいりました。
このようななか、2025年3月期は、預金および貸出金のボリュームが着実に伸長し、収益面では単体の当期純利益が127億円となり、6年連続の増益、過去最高益となりました。
中期経営計画(2023~2025)の進捗状況
貸出を中心としたコアビジネス強化と課題解決型フィービジネス拡充が進展
中期経営計画「MCP 1/3」では、「リアルとデジタルを融合し、地域・お客さまと共に歩む」「あらゆる価値を認め合い、多彩な人材が躍動する」という2つのテーマに基づき、デジタルおよび人的資本への重点的投資を通じてサステナブルな経営基盤を構築するとともに、サービスレベル向上・顧客接点の増強によって、お客さま満足度を最大化することを目指しています。
営業推進態勢
質の高いコンサルティングを提供する営業推進態勢の確立を目指し、2024年4月に本部営業部門をお客さま起点に基づき再編するとともに、営業店における各担当者の役割明確化や本部スタッフの新設・増強などを実施しております。
法人および個人のお客さまへの取組み
深いお客さま理解に基づき、多彩な商品・サービスラインナップと高度な専門性のもと、最適な課題解決提案を行っております。
法人のお客さまに向けては、生産性向上に向けたデジタル化や人的資本経営を促進するコンサルティングメニューの拡充に努めておりますほか、円滑な事業承継やM&Aなど1社1社の成長ステージに合わせた支援を強化しております。
個人のお客さまに向けては、お客さま本位の業務運営を徹底するとともに、長期安定的な資産形成に貢献するべく、新NISA対応ファンドの拡充や職域セミナー開催などに取組んでおります。
また、本部所属の「ウェルスマネージャー」を中心に、資産運用から信託機能を活用した相続・資産承継に至るシームレスな提案に注力しております。
チャネル戦略
当行では、店舗ネットワークを引き続き堅持していくことを前提としつつ、お客さまの利便性を踏まえ、役割の見直しや移転・リニューアル、店舗内店舗化など地域特性に合わせた運営を目指しております。
2024年7月には都心部でのプレゼンス強化に向け、浜松町支店をオープンし、100店舗態勢を構築しております。
このほか、ダイレクトチャネルについては、投信・NISA・外貨預金など、スマートフォンアプリの各種取引機能の拡充を継続的に実施しており、アプリをはじめとしたデジタルチャネルの利用者数は37万先に達し、同チャネル経由のサービス申込比率は当初目指していた30%を1年前倒しで達成しております。
成長戦略を加速させる基盤構築
積極的なデジタル投資で生産性はもとより、お客さま接点・サービスを向上、さらにビジネス領域の拡大を目指す
成長戦略を加速させる基盤構築として、デジタル分野への積極的な投資を進めており、3年間の投資額は当初計画の40億円を上回る見通しです。
こうした投資と併せて、2023年に新設した「デジタル推進部」を中心に先進的なデジタル技術の実装を進めており、お客さまの利便性や満足度向上に向け、スマートフォンアプリの機能拡充や法人向けデジタルサービスの強化に取組んでおります。
また、生産性向上や業務効率化はもとより、お客さま接点・サービスの向上や新たなビジネス領域の拡大を目指した取組みも進行中です。その第一歩となるデジタルコミュニケーション基盤の全面刷新については、2024年11月、「マイクロソフト365」の全店展開を実施しています。
当行では今後も、新たに生み出されるデジタル技術を積極的に採り入れ、サステナブルな経営基盤強化を図っていく方針であり、デジタル投資に関する目線引上げや担い手となる人材の育成に努めるとともに、異業種を含めた連携等により様々な経営資源や知見、プラットフォームを活用していきたいと考えております。
人的資本経営の実践
多彩な価値を結集し、企業価値を向上させていく
当行では、人的資本こそが企業価値の源泉との認識のもと、お客さまの課題解決に向け自律的かつ挑戦心をもって取組むことが出来る人材を育成するとともに、様々な価値観を理解し認め合うことで多彩な人材が活躍できる組織を作っていくという、人的資本経営の実践に努めております。
2024年7月には、「多様なキャリアを選択できる複線型キャリアの整備」「役割・職務に応じた等級とメリハリのある処遇の実現」「組織貢献度を反映した評価制度確立」の3つを柱とした人事制度の全面的な改正を実施しました。
業務領域に応じ新たに設定した8つのキャリアルートで従業員の自律的キャリア形成を促していくほか、シニア層等が能力に応じ適切な処遇を受けられる環境を整えるとともに、若手の上位職層への早期登用などを実現していく本制度のもと、アップスキリングやリスキリングを通じ積極的にチャレンジする人材創出に努めております。

ファイナリストとともに
また、エンゲージメントの一層の向上や人材確保に向け、ベースアップや初任給の引上げを継続的に実施しております。
さらに、人的資本に対する質・量両面での投資充実を図っており、その一環として、地域No.1ソリューションの担い手となる高度な公的資格を有するプロフェッショナル人材の計画的養成にも注力しております。
このほか、柔軟な発想と創造力を育む企業文化の創出に向け、全従業員参加型のビジネスアイデアコンテスト「むさしの未来創造プロジェクト」を継続開催しております。
サステナビリティ経営
地域経済・社会に新たな価値をもたらし、ともに成長を遂げていく
当行の成長は埼玉県の持続可能な発展と不可分であり、経済・社会に新たな価値をもたらし、サステナビリティやレジリエンスを高めていくことは地域金融機関の使命であると認識しております。
こうした認識のもと、「武蔵野銀行SDGs宣言」「サステナビリティ基本方針」等に基づき、持続可能な地域経済・社会の創造に貢献するサステナビリティ経営の継続的な強化を図っております。
地域活性化の取組み
関係人口・交流人口の創出に向け自治体と連携したシティプロモーションに注力しておりますほか、空き家やデジタルデバイド、ウエルネスといった近年課題となっている領域について、自治体や大学、企業の皆さまと連携した先導的な取組みに努めております。
「むさしのアグリイノベーションプロジェクト」として、稲作の実践と加工品開発を通じた農業の課題解決にチャレンジするほか、「見沼たんぼ“小麦”6次産業創造プロジェクト」に代表されるような地域資源の発掘・創造にも引き続き注力しております。
また、100%出資の地域商社「むさしの未来パートナーズ」では、商流支援プラットフォームと個人向け有料会員制サービスを通じ、地域経済・社会の活性化に貢献しております。
このほか、金融経済教育や子ども食堂・子育て世代支援といった分野におきましても多様な取組みを重ねております。
脱炭素・生物多様性への取組み
脱炭素や生物多様性といったテーマにおいても取組みを強化しており、地元企業のサステナビリティ経営への働きかけとして、一社一社の取組状況や規模・業種に応じたファイナンスやコンサルティング提供に注力しております。
また、環境に配慮した店舗・拠点づくりにも継続的に取組んでおり、本店および事務センターで使用する全電力の再生可能エネルギー切替えや、営業店へのEVおよび充電設備の計画的な導入などを通じ、当行グループ全体のCO2排出量削減に努めているほか、本店ビルの植栽の庭「武蔵野の森」では地域在来の樹木や秩父の自然石を使用し、金融機関の本店として初めて「JHEP」認証を取得しております。
さらに、近年では埼玉県全体でのグリーンインフラの維持を目指し、環境NGO「公益財団法人埼玉県生態系保護協会」との包括連携協定に基づき、自治体や企業のネイチャーポジティブへの取組みを積極的にサポートしております。

埼玉県生態系保護協会の池谷奉文会長とともに
企業価値向上に向けて
中長期目線での企業価値向上を目指し強靭な経営基盤を構築する
2025年3月期の連結ROEは4.85%となり、中期経営計画に掲げた4.5%を前倒しで達成いたしました。これを踏まえまして目標を5%以上に切り上げ、更なる向上を目指してまいります。
PBRは、足元で約0.4倍であり、私どもの利益成長や、その源泉である埼玉県の市場優位性を十分反映したものであるとは認識しておりません。ROEの更なる向上とあわせて、PERの向上、すなわち利益の期待成長率向上や株主資本コスト引下げに繋がる取組みを強化していく方針です。
全体像といたしまして、収益力の強化に向けては、マザーマーケットである埼玉県の成長を取り込み、中小企業向け貸出や住宅ローンなどのコアビジネスを強化するとともに、コンサルティング、すなわちフィービジネスを拡充させていく方針としております。
RORA(リスク・アセット利益率)の向上に向けては、営業活動での浸透に継続的に取組んでおり、全店評価への導入、研修の充実や複合的な提案に繋げるツールの高度化を実施しております。
資本運営については、地域経済成長へのリスクテイク、成長を下支えする投資、株主還元のそれぞれが拡充・強化される好循環創出を目指す方針としており、特にリスクテイクにつきましては、埼玉の成長を取り込んだ金融仲介機能の発揮に努めるとともに、毎期の利益成長によりリスクイベントに備えた健全性も確保してまいります。
株主還元につきましては、2022年3月期より増配を継続しており、5月に公表させていただいた通り、2026年3月期の1株当たり年間配当金は140円を計画しております。今後につきましても累進的配当方針のもと充実に努めていく所存です。
また、利益の期待成長率を高めるべく、市場性ある埼玉県の成長を取り込むような中期経営計画の諸戦略の着実な遂行に努めるとともに、その土台となるデジタル分野等への成長投資を加速しております。
あわせて、株主資本コストの引下げに繋がる非財務情報の開示充実や、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーション強化を図るべく、6月には新たに「IR広報室」を設置いたしました。
このほか、コーポレートガバナンスやコンプライアンスの強化に向けても継続的に取組んでおります。「お客さま本位の業務運営」の浸透・定着化に向けた取組みとして、業務改善計画を着実に実行し、定着状況を検証しながら、更なる施策を実行していくことを繰り返すことで、行内浸透を図っております。
こうした取組みにより、外部機関によるお客さま満足度調査の指標にも一定の成果が見られるなど、お客さま本位の業務運営が進展しているものと考えておりますが、今後もこれらの取組みを継続し、適切な業務運営態勢の構築と健全な組織文化の醸成に一層取組んでまいります。
さいごに
次期中期経営計画に向けて
中期経営計画「MCP 1/3」については、親会社株主に帰属する当期純利益およびROEについて最終年度の目標を1年前倒しで達成しましたほか、本年度の業績予想を踏まえ、ROEの目標を「4.5%以上」から「5%以上」に切り上げております。コア業務純益につきましても、200億円とした目標の達成は射程圏内にあり、計画の完遂に向け各施策に一層注力してまいります。
現在、私どもでは来年4月からの次期中期経営計画について、行内外の様々な要因の分析・検討、トップラインやボトムの利益水準、ROEを含めた目指すべき姿を議論しているところです。
計画の全体像や具体的な目標については、今後、固まり次第詳しく説明させていただきたいと思いますが、利益水準としては、コア業務純益350億円、親会社株主に帰属する当期純利益250億円、ROE8%以上を目線に置きながら議論を深めております。
今後も、肥沃なマーケットである埼玉県の成長を取り込み、成長戦略を着実に遂行していくことで、企業価値の更なる向上を実現していきたいと考えております。
「地域共存」「顧客尊重」の経営理念のもと、お客さま、株主さま、地域社会など、全てのステークホルダーの期待にお応えできるよう、グループ役職員一同、業務に一層精励していく所存です。
皆さま方からのご支援ご愛顧を賜りますよう、衷心よりお願い申し上げます。
創業以来変わらぬ「地域共存」「顧客尊重」の経営理念のもと、
地域になくてはならない銀行としての真価をこれまで以上に発揮し、
全てのステークホルダーの皆さまとともに
永続的発展を目指してまいります。
