中小企業の経営支援に関する取組み方針
当行では「地域共存」「顧客尊重」の経営理念のもと、地域密着型金融を銀行の本分として、お客さまに対する円滑な資金供給や経営支援など、その実践に取組んでまいりました。
また、経済環境などの大きな変化を背景に、金融の円滑化への社会的要請が一層高まりを見せる中、お客さまの成長ステージに合わせた、より適切かつきめ細かな対応を行っていくため、以下の基本方針の遵守に努めております。
本方針のもと、お客さまの経営支援に関する様々な取組みを組織的かつ継続的に推進し、長期ビジョン「埼玉に新たな価値を創造する『地域No.1銀行』」の実現を目指してまいります。
〈基本方針〉
- ご相談(新規のお借入れ及び返済条件の変更)に対する真摯な対応
- コンサルティング機能の発揮
- 経営改善計画書策定支援
- 十分な説明の実施
- 金融円滑化に関するご意見・苦情への対応
- お客さまの事業価値を適切に見極めるための能力向上
中小企業の経営支援に関する態勢整備の状況
お客さまの成長ステージに合わせて、経営全般の課題に応じたソリューションを提供するとともに、必要に応じて外部機関と連携しながらコンサルティング機能を発揮し、きめ細かな対応を行ってまいります。
中小企業の経営支援に関する取組み
お取引先企業の様々なステージに応じた、多様なソリューションをご用意するとともに、お客さまのニーズに真摯にお応えする態勢を整備しております。
創業・新規事業・成長段階における支援
◆資金供給方法の多様化
埼玉県、市町村、保証協会などと連携し、お取引先企業のニーズに応じ、制度融資ラインナップを拡充しているほか、私募債等の取扱いも行い、資金供給方法の多様化を図っております。
また、創業や新事業に取組むベンチャー、中小企業の皆さまを資金面から応援する商品「むさしの地域活性化ファンド2号」の取扱いをしております。(25年3月末現在、投資残高109百万円)
◆事業価値を見極める融資手法
事業内容に適した融資手法の取組みを強化するため、23年8月に日本銀行の新資金供給制度に対応し、総額50億円の「ABLファンド」を設定し、積極的に推進しております。
25年3月末でのABL取扱件数は14件、金額約14億円で、担保の内容は工業製品から日本酒、レアアースなど多岐に亘っております。
また、最近では再生可能エネルギー事業へのABL活用(太陽光パネル・売電債権担保)にも積極的に取組んでおります。
〈具体的な取組み事例〉
- A社(酒造業)は、長期間熟成の日本酒を主力商品としていますが、商品の熟成に要する期間(=在庫期間)の長さが、資金計画を立てていく上での課題となっていました。
- 当行では、熟成中の日本酒を担保としたABLをご提案、商品の在庫期間における資金調達を実現し、円滑な資金計画を立てていくことが可能となりました。
(なお、日本酒を担保とした保証協会保証付ABLは、全国初の事例です)
◆ビジネスマッチング等の取組み強化
販路拡大・技術提携など様々なニーズに応える態勢を整えております。25年1月には大規模商談会「彩の国ビジネスアリーナ2013」を埼玉県及び埼玉県産業振興公社等と共催しております。
また、お取引先企業の課題解決にお応えする有料ビジネスマッチングも積極的に推進しており、25年3月末現在の提携先は9社となっております。
〈ビジネスマッチングの実績(24年度)〉
ビジネスマッチング | 451件 |
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有料ビジネスマッチング | 284件 |
合計 | 735件 |

更に、県内の中小企業の新規採用をご支援する、合同企業面接会を埼玉県等と共催しております。(24年7月から11月にかけて計3回開催)
◆海外進出支援
市場国際部内に「海外進出支援室」を設置し、お取引先企業の海外進出を支援する態勢を強化しております。
ご支援中の海外進出案件は、25年3月末現在で50件あり、タイや中国に加え、ベトナムやフィリピン、インドネシアなどのアセアン諸国への進出案件にも対応しております。
〈具体的な取組み事例〉
- B社(自動車部品製造業)では、主要取引先のタイへの進出に伴い、同国への製造拠点設立を行うこととなりました。
- 当行では、タイへの製造拠点設立及びその安定稼働に向け、全面的なサポートを実施しました。
- ・タイ製造拠点の事業計画策定や採算性分析、資金調達計画策定を支援
- ・タイ当局への投資優遇申請、工場のレンタル契約締結、現地銀行との取引開始などに向けた支援
また、23年10月には、中国人民元建ての決済サービスの取扱いを開始したほか、アジアの現地銀行と業務提携し、海外進出企業のビジネスマッチングや海外情報の提供を行っております。
◆外部機関等と連携した企業支援
中小企業が新商品開発や新市場創出に向けて取組む際に、経済産業省等が実施している「技術開発助成制度」等を活用しながらサポートを行っております。
〈具体的な取組み事例〉
- C社(光学フィルター製造業)では新製品の量産化を検討していましたが、研究開発等に多額の設備投資を必要とすることが課題となっていました。
- 当行では、埼玉県産業振興公社と連携し、経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」として補助金の助成を提案しました。C社の新製品量産化事業は、助成事業として採択され、補助金を活用し、大学と共同で新製品の研究開発を行っております。
その他、中小企業支援に向けた官公庁と連携した取組みも積極的に行っております。
〈官公庁との連携の一例〉
(「経営革新等支援機関」としての中小企業支援)
24年11月、関東財務局及び関東経済産業局より、「経営革新等支援機関」の認定を受け、中小企業等に対する、より専門性の高い支援事業を行っております。
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〈主な取組み〉
- ・中小企業の経営状況を分析し、事業計画の策定・実施に係る指導と助言を行っております。
- ・認定機関として通常の保証料率より一区分低い料率が適用される制度融資「経営力強化保証制度」の取扱いを行っております。
(「建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業」パートナー金融機関としての支援)
24年4月、国土交通省が実施する「建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業」に関するパートナー協定を締結し、中小建設企業の新事業展開、企業再編、転廃業などの経営戦略実現を支援しております。
◆目利き人材の育成
目利き人材育成に向け、融資審査部署でのトレーニーや、業種毎の特性をより深く理解するためのセミナーを実施しております。
また、融資部産業調査室では、高い技術力を有する県内優良企業の工場等、企業の現場を視察する「企業視察研修会」を開催しています。
本研修は、産業、製品、技術等に関する知識を身に着け、目利き力・情報収集力・情報感応度の向上を図り、企業を多面的かつ総合的に理解するスキルの養成を目的としています。
25年度は自動車関連業界を対象に行っており、今後も化学産業、食品製造業等、さまざまな業界を対象に継続的に実施する予定です。
経営改善・事業再生・業種転換等の支援
◆金融円滑化への取組み
金融円滑化への取組みを一層強化し、お客さまからのご相談等によりきめ細かく、かつ適切に対応するため、21年12月「金融円滑化推進委員会」を設置しました。
22年1月には、「金融円滑化に関する基本方針」、「金融円滑化管理方針」「金融円滑化管理規程」を制定し、金融円滑化に関する管理態勢を整備しました。
中小企業金融円滑化法は25年3月末をもって期限を迎えましたが、同法終了後も当行の金融円滑化に関する基本方針は何ら変わるものではありません。今後も全行を挙げ、一層の金融円滑化に取組んでまいります。
◆経営改善支援・事業再生支援
◆事業承継・業種転換の支援
後継者対策などの様々な課題に迅速かつ丁寧にお応えするとともに、必要に応じM&Aなどのソリューション提供を行っております。
グループ会社等含めた全行的な支援態勢のもと、最適な経営改善・再生支援を展開し、業種転換等に向けたサポートを展開しております。
〈具体的な取組み事例〉
- D社(製造業)は、主要取引先からの受注減少により、今後の事業継続について課題を抱えていました。
- 当行は抜本的な業種転換を行うことを提案し、D社の所有する工場用地の一部売却による債務整理と、他の所有土地を活用した収益物件建設を行いました。その結果、同社は不動産賃貸業への転換を実現し、経営の安定化が図られました。
◆外部機関と連携した企業支援
より実効性の高い支援を志向し、中小企業再生支援協議会など外部機関や外部専門家と積極的に連携を行っております。
○中小企業再生支援協議会との連携
埼玉県中小企業再生支援協議会と密接に連携を図り、25年3月末現在の同協議会への相談先数は30先にのぼっております。
○外部専門家との連携状況
独自に外部のコンサルタントを紹介するほか、国・地方自治体などが行う公的な専門家派遣事業を積極的に活用しており、こうした連携を通じた支援先は37先にのぼっております。
地域の活性化に関する取組み状況
成長分野への取組み
◆成長分野への円滑な資金供給
経営者の方々との対話を通じてビジョンや経営課題を共有し、企業と真に向き合いながら、新たな需資を喚起するという地域密着型金融に愚直に取組み、成長分野の資金ニーズにタイムリーにお応えしております。
22年9月から開始した制度融資「むさしの『成長基盤強化ファンド』」の取扱実績は、25年3月末現在で、環境・研究開発・医療分野を中心に670件、379億円にのぼっております。
◆医療・介護分野での取組み
埼玉県では急速な高齢化などを背景に、医療・介護施設の大規模な整備が進展しており、これらのマーケットは今後も拡大が見込まれております。
こうした動向を踏まえ、資金面のニーズにとどまらず、医療法人と介護施設のマッチングや人材不足への対応など、様々なニーズにお応えしております。
○新商品を通じ地域医療充実をサポート
24年8月に融資商品「メディカルパートナー」の取扱いを開始しました。本商品はご利用金額・期間ともにワイドな取扱いが可能であり、また、新規開業医の方にもご利用しやすい商品設計となっており、地域医療の充実に貢献しています。
◆農業分野での取組み

埼玉県は首都圏という一大消費地の中の農業生産地として、全国トップクラスの生産が行われており、農業法人や新規就農者などの農業の担い手も着実に増加しています。
○経営革新の支援
20年に農業者向けセミナー「ぶぎん農業経営塾」を立ち上げ、経営革新に向けたサポートなど、農業者の皆さまの各種ニーズに対応しております。
「ぶぎん農業経営塾」はこれまで5回開催し、延べ700名を超える農業者の方にご参加いただき、先進的農業者や研究農場の見学、専門家(大学教授やスーパーのバイヤーなど)による講演会を行っております。
○販路拡大の支援
農業者の皆さまの販路拡大に向けたビジネスマッチングに積極的に取組んでおります。
〈具体的な取組み事例〉
- E社(学校給食向けの食材卸売業)では、埼玉県産の食材の取扱いを拡大したいとのニーズを持っていました。
給食向けの食材は年間を通して大量かつ安定的な供給が必要であり、こうした条件のマッチした生産者を探していました。 - 当行は、E社の条件にマッチした食材の供給が可能なF社及びG社(ともに農業法人)を紹介、成約へと結びつきました。
E社は埼玉県産の食材を取扱う業者として受注が増加し、F社・G社は年間を通して安定的な取引が見込める先との取引先の開拓へと繋がりました。
また、24年11月には、農産品生産者の皆さまの販路拡大などを支援するとともに、県産品の「地産地消」をPRするため、「美味いもの出会いフェア」を開催し、16,000人を超える方々に、ご来場いただきました。
○農業者専用融資商品
21年6月に農業者専用融資商品「むさしの『花水木〈ハナミズキ〉』の取扱いを開始しました。本商品は、万一の場合に備えた団体信用生命保険を付加するなど、農業者の皆さまにご利用しやすい商品となっております。
◆再生可能エネルギー・環境分野での取組み
埼玉県は、年間の快晴日数が全国トップクラスであるほか、県土に占める河川面積も全国1位と気候・地勢に恵まれており、各地でメガソーラーなど再生可能エネルギー事業が進展しています。
○太陽光発電事業のサポート
再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用し、太陽光発電事業に参入する企業をサポートする「むさしの太陽光発電事業支援融資『太陽の恵み』」の取扱いを24年8月より開始しております。
また、株式会社ぶぎん地域経済研究所(グループ会社のシンクタンク)とともに、「太陽光発電セミナー」を開催し、発電事業に関する知識やノウハウなどの向上に貢献しています。
〈具体的な取組み事例〉
- H社(倉庫業)は、所有している倉庫の屋根に太陽光発電設備を設置し、発電事業への参入を検討していました。
- 当行は太陽光発電事業という新規事業の価値を勘案し、事業の基盤となる発電設備と「売掛金」に該当する売電債権を担保としたABLの活用を提案しました。
これによりH社は太陽光発電事業参入に係る資金調達を実現しました。
○環境配慮型融資商品の取扱
環境に配慮した事業を行う企業をサポートする融資商品「二刀流〈エコベスト〉」「エコ私募債」の取扱いを行っております。
地方公共団体との関係強化
埼玉県下水道局の公金事務を取扱う「総括出納取扱金融機関」の指定を受けているほか、県内で、横瀬町、朝霞地区一部事務組合の2先、県外では茨城県の五霞町の1先、合計3先の指定金融機関となっています。
また、出納及び支払い事務の一部を取扱う「指定代理金融機関」については、さいたま市、朝霞市、日高市、幸手市の4市から指定を受けているほか、各種地方団体の制度融資取扱窓口として、中小企業の資金ニーズにお応えしています。
産学連携の取組み
県内に拠点を置く7大学と提携し、お取引先企業の研究開発・経営革新などの経営課題解決をご支援しております。
また、産学連携を通じ、個別のお客さまのご支援にとどまらない、観光活性化など地域振興に向けた取組みも行っております。
〈具体的な取組み事例〉
- 当行は立教大学観光学部と連携し、「まち歩き」という新しい観光のスタイルを提唱し、観光地図「まち歩きマップ『ぶらって』シリーズ」を作製しています。
これまで「幸手」「羽生」「行田」「加須」のマップを作製し、25年2月には第5弾となる「まち歩きマップ『ぶらって大宮 氷川参道』」を作製しました。
同マップを通じ、豊かな自然と長い歴史を有する氷川参道の新たな魅力を知っていただき、地域の更なる振興に貢献しています。
地域の更なる活性化に向けた取組み
地域の方々と共に様々な事業を立ち上げ、地域の更なる活性化に貢献していくことを目指し、25年4月に地域サポート部内に「地域価値創造室」を新設しました。