連載コラム【お金の世界の歩き方】
〜第42回 ESGとは〜
花子
「今日もよろしくお願いします。実は、今日はちょっとお聞きしたいことがあります」
先生
「よろしくお願いします。はい、何でしょうか?」
花子
「最近、新聞の経済面で時々見かける単語があって『ESG』という言葉なのですが…。金融面などの記事を読んでいると、やたらと横文字が多いので、ついつい避けてしまう自分がいます」
先生
「たしかに、金融界には横文字が多く登場しますね。さて、『ESG』ですね。
『ESG』というのは、それぞれ意味する単語の頭文字をとっています」
花子
「それって英単語ですよね」
先生
「その通りです。『E』は『Environment』の頭文字で『環境』という意味です。次に『S』、これは『Social』のことです。つまり、『社会』ですね。そして、最後は『G』です」
花子
「あっ、わかりました!『Global』の『G』じゃないですか?」
先生
「残念でした。これは『Governance』のことで、『企業統治』を意味します」
花子
「環境と社会そして企業統治のこの3つが大事である、ということですか?」
先生
「簡単に言ってしまえば、その通りです。この3つは企業が成長していくのには欠かせないものである、という考え方が広がってきたのです」
花子
「なんだか抽象的で今一つ理解できないです…」
先生
「今までの投資というのは、企業の財務諸表を分析し『売上高』や『利益』などの数値などを調べました。でも、企業の成長というのは、そういう数字だけでは推し量ることができませんよね」
花子
「それはわかります。100点ばかり取る子どもが良い子ということでないのと同じですよね」
先生
「さすが、花子さん。良い例えですね。財務諸表に出ていない情報も大事であり、その中で、環境への取り組み、顧客や従業員そして地域社会などにおける社会的責任をしっかりと果たしているかなどが企業の成長には欠かせない、ということなのです」
花子
「そうなんですね。ところで、具体的にはどのようなことがあるのですか?」
先生
「例えば、環境という面では再生エネルギーや二酸化炭素削減への取り組み、社会という面では個人情報の保護なども大事な点です。そして、企業統治では積極的な情報開示や資本効率の高い意識などが求められます」
花子
「なるほど、ESG評価の高い企業は社会的意義があり企業成長につながっていく、ということなのですね」
先生
「その通りです。特に2006年に当時の国連事務総長のアナン氏が機関投資家に対し、ESGの要素を投資の判断材料に組み入れる「責任投資原則」を提唱し、投資をする際にESGの配慮を求めたことが大きく影響しています。今では、3,000を超える機関が署名しているのですよ」
花子
「へえー、国連が動いたのですか。それはビックリです」
先生
「現在の世界全体のESG投資は30兆ドルを超えると言われており、投資対象として無視できない規模となっています」
花子
「30兆ドル・・・えっ、3,000兆円以上あるのですか!ちょっと額が多すぎてビックリしました」
先生
「欧米ではESG投資が進んでおり、世界のESG市場の8割以上を占めています。日本においては、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年に『責任投資原則』に署名したことをきっかけに、国内の機関投資家の意識も変わってきています。環境問題に取り組んでいる企業、従業員への対応がしっかりとされている企業には、積極的に投資をしていこうというものです」
花子
「なるほど、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産も何らかの形でESGに配慮されているということですね」
先生
「そうですね。金融庁もESG要素の勘案を後押ししており、財務情報のみで投資先判断をすることが時代遅れになりつつあります。日本におけるESG投資の市場規模も今後拡大傾向が続くことが見込まれます」
花子
「そうなんですね。でも少し気になるのですが、ESGというのは、財務諸表には出てこない情報という話がありましたよね。それなのに投資家というのは、簡単にESGの部分を把握することができるのですか?」
先生
「良い質問ですね。機関投資家などはESGを評価する機関が測定するESGスコアというものを活用しているのです」
花子
「なるほど、ESGを測定する機関が存在するのですね。たしかに、そういう機関がスコアを付けてくれるのであれば、投資をする際に役立ちますね」
先生
「また、そうしたESGに基づいた投資信託も登場してきたので、これからもESGには要注目ということだと思います」
花子
「ESGのことがよくわかりました!ありがとうございます」
『武蔵野 花子』プロフィール
埼玉県内に住む33歳の女性。
パートタイムで働いており、家族は会社員の夫・長女(小学校1年生)・長男(幼稚園)がいる。最近よくママ友と子供の教育費や、家の購入について話すことが多く、これからのお金の使い方について、どうすればいいのかわからず悩んでいる。
『川口先生』プロフィール
証券会社や銀行を経て、現在は金融ジャーナリストとして活躍している。武蔵野家の近所に住んでいて、悩める花子に対しお金についていろんな角度から話をしてくれる。
趣味はスポーツで、ゴルフが得意だそう。また、社会人になってから始めた空手も黒帯である。