連載コラム【お金の世界の歩き方】
〜第36回 景気を知る②〜

先生

「花子さん、前回は景気を知るための指標を紹介しましたね」

花子

「はい、ありがとうございます。景気が良くなりそうなのか、悪くなりそうなのかを知るのに役に立つ指標を教えていただきました」

先生

「3つ紹介しましたが、覚えていますか?」

花子

「はい。GDPと有効求人倍率と・・・あと一つは景気なんとか・・・」

先生

「景気ウォッチャー調査というものです。これらは私たちが景気を知るのに便利な指標ですので、日頃からチェックしておくことをお勧めします。ところで、せっかく花子さんもお金に興味を持って、金融商品を購入する機会もあるのでしょうから、今回は資産運用をする人たちにチェックしてもらいたい景気の指標をお話ししたいと思います」

花子

「嬉しいと言いたいところなのですが、今回の指標の方が前回の指標よりも難しそうですね」

先生

「大丈夫ですよ。分かりやすく説明しますし、プロの機関投資家と呼ばれている人たちがどのような指標をチェックしているのかを知るのに良い機会だと思います」

花子

「わかりました。よろしくお願いします」

先生

「前回紹介したGDPというのは景気の良し悪しがわかる指標として便利ではあるのですが、四半期毎の発表でありちょっと遅いというデメリットがあります」

花子

「遅いというのは、『景気が悪い』という判断が出た時には既に景気は悪くなっている、ということですか?」

先生

「そういうことです。機関投資家の人たちは少しでも早く景気の良し悪しを知りたいと思っています。そこで注目する指標の一つに経済産業省が毎月発表している『鉱工業生産指数』があります」

花子

「鉱工業生産指数とは、何を表しているのでしょうか?」

先生

「日本全体の鉱工業の動向を示す統計で、生産・出荷・在庫などの状況を示しています」

花子

「なぜ鉱工業生産指数に注目するのですか?」

先生

「それは、日本の経済活動に占める割合が大きいからです。GDPに占める鉱工業の割合は約2割で、鉱工業関連産業も含めると約4割になります。また、この指標は日本経済の鉱工業製品のうち400種類以上の品目を採用して分析しています。日本経済を広くカバーしていると言っても過言ではありません」

花子

「多くの製品を観察しているのですね」

先生

「はい、携帯電話や乗用車、鉄骨や産業用ロボットなど多岐にわたっています。
ところで、花子さんが工場を経営する社長だとしましょう。景気が悪いと製造した製品が売れなくなって在庫が増えますよね。そうすると、花子さんはどのような行動に出ますか?」

花子

「製品が残ってしまうのであれば、それ以上増えないように生産を控えます」

先生

「そうですよね。では、景気が良いという判断をしたらどうでしょう」

花子

「はい、製品が売れるだろうと考えますので、もっと生産しようとします。景気の良し悪しで生産量は増減しますね」

先生

「その通りです。経営者は景気動向を意識しながら生産行動を調整するので、その生産台数を観察すると景気の良し悪しの判断に役立つのです」

花子

「それはわかりやすいですね。ところで、現在の鉱工業生産指数はどのような状況なのですか」

先生

「現在の鉱工業生産指数は2015年を基準としています。つまり、2015年を『100』という数字とします。それに対して、2020年の5月の段階では、新型コロナウイルスの影響もあり『78.7』となっています」

花子

「新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言などの自粛があったので、生産活動が停滞して下落しているのは想像できますが、数字的には2割以上も下落しているのですね」

先生

「はい、かなり低迷していると考えていいでしょう。
そして、もう一つ景気の良し悪しを早めに知る速報性のある指標を紹介したいと思います。先ほどの例の続きで説明しましょう。花子さんの工場でも製品を作るのに部品を購入しなくてはなりません。その部品を購入するために部品工場などに行って数量や価格の交渉を行います。そこで部品などの調達をする際には、自分たちの生産状況はもちろん周りの経済環境を考慮して交渉したりしますよね」

花子

「確かに、生産活動が低迷して部品が余っているのであれば、部品の価格も下がることが期待できますよね。また、相手先の会社の人と話をすることで、皆さんが景気をどのように考えているのかもわかります」

先生

「その通りです。つまり、製造業で部品などの調達をする購買者の人たちの景況感というのは景気を考える上で大変参考になるのです。それは、製品の需要動向や取引先の動向などを見極めて仕入れを行うからです」

花子

「なるほど。そうなんですね」

先生

「そこで、そういう購買者を調査対象にした『購買担当者景気指数』という指標があります。『Purchasing Manager’s Index』の略で、『PMI』とも呼ばれます。PMIは『50』を景況感の分岐点としており、これを下回れば景況感が悪く、これを上回れば良いとされています。これは多くの国で用いられている代表的な経済指標の一つで、特にマーケットにおいては、アメリカの『ISM製造業・非製造業景気指数』などが有名です」

花子

「こういう指標の説明を聞いていると、景気を知るにはやはり『現場』が大事なんだな、と思ってしまいます」

先生

「その通りです。経済は経済学者の机の上で動いているのではなく、現場で動いているのです」

花子

「面白いたとえですね」

先生

「最後にもう一つ、多くの人が気にしている指標があります」

花子

「多くの人が気にしているのですか。私も知っているでしょうか?」

先生

「テレビなどでは毎月報道されていますよ」

花子

「うーん、なんだろう・・・」

先生

「それはアメリカの『雇用統計』です。この数字によってマーケットも大きく動いたりするのです」

花子

「えっ、アメリカの指標なのにですか?」

先生

「そうなのです。やはり、世界経済を牽引しているのはアメリカですので、アメリカの経済状態というのは株式・金利などのマーケットにも影響を与えます。その雇用統計は原則、毎月第1金曜日に発表されます。中でも注目されるのが非農業部門雇用者数で、予想の数値と発表された数値の乖離が大きいとマーケットは大きく反応することが多いです」

花子

「なるほど、ありがとうございます。私もただ単に景気の良し悪しを知るだけでなく、お金を賢く運用できるようにするため、これからは今回教えていただいた経済指標も見るようにしたいと思います」

先生

「頑張って下さい」

先生・まさに『現場の声』が指標になるのです。花子・なるほど!投資家が注目する指標もチェックするようにします!

『武蔵野 花子』プロフィール

埼玉県内に住む33歳の女性。
パートタイムで働いており、家族は会社員の夫・長女(小学校1年生)・長男(幼稚園)がいる。最近よくママ友と子供の教育費や、家の購入について話すことが多く、これからのお金の使い方について、どうすればいいのかわからず悩んでいる。

『川口先生』プロフィール

証券会社や銀行を経て、現在は金融ジャーナリストとして活躍している。武蔵野家の近所に住んでいて、悩める花子に対しお金についていろんな角度から話をしてくれる。
趣味はスポーツで、ゴルフが得意だそう。また、社会人になってから始めた空手も黒帯である。

執筆:川口一晃

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