連載コラム【お金の世界の歩き方】〜第22回 年金の基礎 〜確定拠出年金〜〜
先生
「これまで年金制度の1階と2階の部分について勉強をしましたね」
花子
「はい。公的年金と言われる部分ですよね」
先生
「はい。今日は3階部分について簡単に説明しましょう」
花子
「お願いします」
先生
「3階部分は公的年金の上乗せを行う部分です。企業年金などがこれにあたるわけですが、覚えてもらいたいのは、『確定拠出年金』という制度です」
花子
「確定拠出年金という言葉は時々私も耳にするのですが、どのような制度なのでしょうか?是非、わかりやすく教えてください」
先生
「任せてください。その前に確定給付年金の話をしておきましょう」
花子
「確定拠出ではなくて、給付ですか・・・?」
先生
「そうです。以前の企業年金は確定給付年金が主流でした。確定しているのは『給付』、つまり、将来受け取ることの出来る金額が確定していたのです」
花子
「なるほど、もらえるお金が確定しているので『確定給付』というのですね。ということは、『確定拠出』は出すお金が決まっているということですか?」
先生
「その通りです」
花子
「老後の生活などを考えると、もらえる金額が決まっている方が安心するし、将来の生活の計画を立てるのにも役に立ちますよね?確定拠出よりも確定給付の方が良いのではありませんか?」
先生
「確かに、年金をもらう側の意見としては花子さんの言う通りかもしれません。でも、事態はバブル崩壊によってガラリと変わったのです」
花子
「バブル崩壊がここにも影響しているのですか?」
先生
「はい。確定給付年金はあらかじめ給付するお金を約束していました。責任を持って運用するのは企業です。ところが、バブル崩壊によって運用環境が悪化し、約束していた金額を用意できなくなるケースが出てきたのです」
花子
「えっ、そういう会社はどうなってしまったのですか?」
先生
「企業が不足分を用意しなくてはならなくなりました。そして、企業によってはその負担に耐えかねて企業年金を廃止する会社も出てきてしまったのです。そんな確定給付年金に代わって登場したのが確定拠出年金制度というわけなのです」
花子
「なるほど。給付が確定という制度では運用がうまく行かずに資金が足りなくなった場合に、企業は責任を持って負担しなくてはいけなくなるけど、確定しているのが拠出であれば最初に決めた金額を出せばいいので企業としては負担部分の金額を管理しやすいですね」
先生
「その通りです。そのような背景もあり、広まってきた制度なのです」
花子
「拠出する金額が決まっているというのはわかりましたが、企業はその決まった金額でどのように運用してくれるのですか?」
先生
「実は、運用するのは企業ではありません。加入者自身で運用しなくてはならないのが確定拠出年金制度のポイントです」
花子
「えっ?例えば私が社員であれば、私自身が運用をすることになるのですか?」
先生
「広い意味では、そうです」
先生
「ただし、自ら積極的に運用するのではありません。用意された運用商品の中から、自分が投資をする商品を選択することになるのです。
因みに、確定拠出年金には各企業が導入の有無を決定する『企業型』と、個人で入れる『個人型』があります。今回は企業型を中心に説明していますが、どちらの場合でも、運用するのはあくまで自分自身という共通点があります」
花子
「パートタイムの私が加入できるのは『個人型』ですね。でも自分で運用商品を選ばないといけませんよね?選択する商品にはどういうものがあるのですか?」
先生
「選択できる運用商品は大きく分けて2つあります。一つは『元本確保型』、もう一つは『元本変動型』です」
花子
「『元本確保型』というと?」
先生
「『元本確保型』とは預貯金などのことで、例えば定期預金などが用意されています。元本は確保されている代わりに大きく増える可能性は低いです」
花子
「では『元本変動型』にはどういうものがあるのですか?株とかですか?」
先生
「『元本変動型』は投資信託です。いくつかの種類のファンドが用意されています。例えば、インデックスファンドや外国の株式に投資をするファンド、株式の組み入れ比率を制限した安定型のファンドなどもあります」
花子
「そうなんですね」
先生
「ですから、選んだファンドが大きく値上がりすれば将来の受給額が増えますし、逆に元本を割り込めば受給額が減ってしまいます。そして、そうした運用成果については自己責任となるのです」
花子
「自己責任と言われても経験がほとんどないのですから、私のような人には厳しいと思うのですが・・・。どちらか一つを選ばないといけないのですか?」
先生
「いやいや、『元本確保型』『元本変動型』のどちらか1つを選ぶわけではなく、決められた掛金額の範囲内で、いくつかの運用商品を自分で組み合わせることができます。また、組み合わせる比率はいつでも変更することができますので、企業側が開催してくれる勉強会や銀行で開催している資産運用セミナー等に参加して、組み合わせを考えると良いでしょう」
花子
「そうなんですね。私もセミナーに参加したり、自分でも勉強してみようと思います」
先生
「そうですね。少しずつでも良いので勉強することをお勧めします。
因みに、個人型は『iDeCo』と呼ばれている制度なのですが、『iDeCo』についてはまた今度詳しく説明しますね」
花子
「はい。今日も為になる話をありがとうございました」
『武蔵野 花子』プロフィール
埼玉県内に住む33歳の女性。
パートタイムで働いており、家族は会社員の夫・長女(小学校1年生)・長男(幼稚園)がいる。最近よくママ友と子供の教育費や、家の購入について話すことが多く、これからのお金の使い方について、どうすればいいのかわからず悩んでいる。
『川口先生』プロフィール
証券会社や銀行を経て、現在は金融ジャーナリストとして活躍している。武蔵野家の近所に住んでいて、悩める花子に対しお金についていろんな角度から話をしてくれる。
趣味はスポーツで、ゴルフが得意だそう。また、社会人になってから始めた空手も黒帯である。