相続人がいないとどうなる?

プロフィール

女屋 哲也 (おなや てつや)

1級FP技能士、CFP®、証券外務員、
DCマイスター、宅地建物取引主任者、行動経済学会会員

FP工房 女屋FP事務所所長、高崎経済大学非常勤講師、群馬県金融広報アドバイザーなどマルチに活動。見かけによらずアウトドア派で、尾瀬、富士山から屋久島まで日々、山行に励む。招き猫収集家でもある。

貴子さん(50代・会社員):
先生、私は独身で、両親は既に他界しており、
兄弟もいないので、身寄りはいません。
私が死んだとき、財産はどうなってしまうのでしょうか…

相続人がいなかったら…

相続人がいるかどうかが明らかでない状態を「相続人の不存在」といいます。

相続人となるべき人が戸籍上見当たらないときや、相続人全員が相続を放棄したときなどが、そのケースです。相続人捜索などの一定の手続きを行っても、それでも相続人が現れないときは、相続人なしと確定されます。

こうした場合、家庭裁判所は申し立てに基づいて、特別縁故者(※)に相続財産の全部または一部を与えることができます。それでもなお残余財産があるときは、国庫に帰属することになります。

※特別縁故者…相続人以外で、被相続人と生計を同じくしていた、被相続人の療養看護に努めたなど、特別の縁故関係があった人のこと。相続人がいない場合、清算後の残存相続財産の全部または一部の分与が認められている。

特別縁故者って誰?

この特別縁故者と認められるのは、@被相続人と生計を同じくしていた人(主として内縁の妻のように、密接な生活関係があるにもかかわらず、民法上の相続権が認められていない人など) A被相続人の療養看護に努めた人(被相続人の感謝の意思を推定し、遺言が可能であればその者に遺言したであろうと考えられる人など)Bその他、被相続人と特別の縁故があった人とされています。

内縁の妻や事実上の養子が代表的な例ですが、被相続人の療養看護に努めた親戚・知人・看護師なども含まれる場合があります。また、特別縁故者は個人だけでなく、法人も該当します。

家庭裁判所が相続財産を分与するためには、特別縁故者からの申し立てがなければなりません。 特別の縁故関係があって被相続人のために貢献したとしても、申し立てがなければ、相続財産の分与は受けられません。

また分与するかしないか、一部分与か全部分与かについては、家庭裁判所の裁量となります。この申し立ては、「相続人捜索の公告」の期間満了後、3ヵ月以内に行う必要があります。

さらに、特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合、その時の時価が基礎控除額(3千万円)を超えたときは、超過分について相続税が課せられます。

ビフォー & アフター

貴子さんの心配な気持ちは、よくわかります。もしも、特別縁故者となるような方がいるのならば、今の時点で対策を検討しておくことをお勧めします。具体的には、遺言を作成しておくことです。

遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を、相続人、相続人以外の人や、法人に無償譲与することを、「遺贈」といいます。また、遺産をもらう人(受贈者)と、あらかじめ契約を交わし、贈与者の死後、その効力が生じる「死因贈与」という方法もあります。生前に受贈者の承諾が必要になってくるという点で、遺贈よりも、より確かな準備ができます。

さらに、「私が死んだら財産を譲るので、その代わりに、ペットの面倒を見てほしい」など、贈与に一定の負担を課す、「負担付贈与」という契約もあります。

こうした、死後のアフター対策を取ることで、貴子さんも心配を和らげることができるでしょう。

でも、アフター対策だけでなく、ビフォー、つまり生前の過ごし方も大切です。もしお金にゆとりがあるなら、リフォームをして、老後の住環境を快適なものにしてみてはいかがでしょう。あるいは、災害義援金を拠出して世の中の役に立つ方法もあります。ふるさと納税も人気ですし、寄付金控除を受ければ、自身のためにもなります。

死後の心配だけでなく、今を充実させることも大切です。楽しんで生きることこそ、最善のアフター対策につながっていくでしょう。

(記事提供:ニッキンマネー2015年9月号 FP工房 女屋事務所 相続なんでも相談室)

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