彼と結婚とお金

大切なのは結婚してから

準備で手いっぱい 先のことなんて…

結婚は一生に一度(たぶん)しかない、大切なイベントです。とくに女性にとっては、憧れの舞台でしょう。自分とパートナーが、お世話になる人の前で永遠の愛を誓い、挨拶とおもてなしをする趣旨ではありますが、実際には自分が主役になれる、数少ない機会でもあります。

右の図表にもあるとおり、挙式・披露宴・披露パーティーをあわせた結婚費用の全国平均は約334万円。もちろん普通は参加者からご祝儀がいただけるので、この金額がまるまる自己負担になることはありませんが、それでも3〜4割くらいは用意する必要があります。この他にも、新婚旅行代や新居の準備費用などもあります。両家からの応援も多少は期待できるでしょうが、それでも結婚には相当なお金がかかります。

なかなか収入が増えないなか、カップルにとって、挙式費用をどうするかは頭の痛い問題です。挙式のレベルもピンキリですが、一生に一度なわけですから、できれば妥協は避けたいところ。まとまった休暇と予算で旅行をする機会も、そうそうないでしょうから、いやが上にも期待は高まります。

ドレスの選定、料理、招待客の調整など、挙式の日時が近づくにつれて、忙しさはピークに。正直、お金の算段と挙式の準備で、2人ともいっぱい、いっぱいでしょう。先のことまで、気を回すゆとりなんて、ないかもしれません…

これからのこと そしてお金のこと

でも、でもです。本当に先のことは後回しで大丈夫でしょうか?

挙式は1日で終わりますが、彼との生活は、その後、何十年も続きます。セレモニーの準備は確かに大事ですが、彼との生活をより豊かにするための準備も、とても大切なはず。とくに将来のライフプランを確認し、そこででてきそうなお金の問題を2人で共有しておくことは、生活を共にするカップルにとって必須課題です。

そしてお金に対する価値観も、お互いに知っておきたいところ。もし彼が浪費家だったら? お金のかかる趣味を持っていたら? ギャンブル大好きだったら? ものすごくケチだったら?

結婚したら独身≠ナはなくなります。自分のペースではなく、2人のペースを前提に生活していくことになります。お金もそうです。今後、家計の負担はさらに厳しさを増すことが予想されます。その中で、お金に対する2人の考え方の相違は、時として、よからぬ方向へ2人を押しやります。

たとえば2012年の司法統計で、妻側からみた離婚調停の申し立て動機を見てみると、ダントツ1位は「性格の不一致」。でも、3位には「生活費を渡さない」、6位には「浪費する」と金銭面の原因がランクインしています。

金銭感覚の不一致も、広く捉えれば性格の不一致に含まれるでしょうから、お金の問題が夫婦生活に与える影響は、決してバカにできるものではありません。

いずれにせよ、大好きな彼と安心して生活するためにも、結婚を機会に、彼とこれからのお金のことについて、きちんと話し合ってみませんか? 物事は最初が肝心ですよ。

お金の話 ここだけはチェック

預貯金、収入、保険 そして名義の変更も

さあ、ここからは結婚する際に、ぜひ彼と話し合っておきたい、お金のチェックポイントについて、具体的にみていきましょう。

まずは金融商品を中心に、以下の4つを紹介します。2人の預貯金や収入は、これからの生活の基盤となる大切なお金ですから、その詳細の確認が、まずは基本です。一般にFPのアドバイスでは、手元に残しておくと安心なお金の目安は、月収6ヵ月分といわれていますので参考にしてください。

一方、2人の生活には万一の備えも大切です。家族が安心して生活できるよう、公的あるいは勤め先の福利厚生のほかに、個人的にどの程度の備えがいるのか、いわゆる必要保障額を見積もり、それに保険で備える必要があります。

若い人のなかには無保険の方もいるみたいですが、2人の生活を始めるにあたって、お互いに責任が増すことを理解しておいてください。

また、結婚すると一般に女性は姓が変わるので、様ざまな点で、名義の変更が必要になります。

お金に関連するものだけをピックアップすると、預貯金通帳やクレジットカード、生命保険証券などを挙げることができます。基本は各会社の窓口で手続きしますが、インターネットや電話で変更できる場合もあります。パスポートや運転免許証など身分証明書になるものも、新しい生活のなかで必要になる機会が多いでしょうから、早めに手続きしてください。

まずは基本の4項目から!

どうする?こんなことあんなこと

2人で働く?

社会保障費の増大や消費税率の引き上げなど、今後も家計の負担増が懸念されるなか、夫婦で家計を支える世帯が増えています。結婚する上で、今後の生活を1人の収入に頼るのか、それとも2人で働いて支えるのか、この点について共通認識を持つことは、家計運営の上で非常に大切です。お互いの希望を確認しましょう。

ずっと今の会社?

今や転職希望者は約623万人で、就業者全体の約1割を占めています。キャリアアップを目的に転職をめざす人も、決してめずらしくありません。ただ、本人は真面目な気持ちで希望していても、一時的にでも収入減になるリスクはあります。生活を共にするパートナーには、最初にきちんと話しておくことが望まれます。

趣味は続ける?

独身時代は、ある程度、趣味にお金をかけることができたかもしれませんが、結婚後はそうもいきません。本人にとって大事なことでも、その出費と時間に対し、パートナーの理解が必要です。結婚後も続けたいほど、自分にとって大事な趣味なら、その理由や、費用、頻度などについて、事前に話し合っておくことをおススメします。

子どもは何人?

当たり前の話ですが、子どもの数によって家計の負担は大きく変わります。その最たるものは教育費ですが、年が近いと学年が重なり、大学進学時などは相当大きな負担が家計にのしかかります。家計負担の分散を図りながら、安心して子育てするためにも、「いつごろ? 何人くらい?」という見通しを、2人で持つことは大切です。

出産にかかるお金は?

出産時には、健康保険から出産育児一時金42万円がでるので、自己負担額がそう大きくなることはありません。むしろ押さえておきたいのは、出産前の費用とその手続きでしょう。妊娠後は定期的に健診を受けることになりますが、各自治体では健診費用の一部を助成してくれます。お住まいの自治体で確認してみてください。

親や兄弟の面倒は?

将来は、親と同居して面倒を見たいと考える人もいるでしょう。あるいは、障害などの理由で生活力に乏しい兄弟や親戚を、結婚後も金銭的に支援したいというケースもあるかもしれません。ご事情は様ざまですが、いずれも家計に大きな影響を与える話です。家族や親戚の現状についても、お互いに確認しておきたいところです。

家はいつ買う?

マイホーム購入は、将来の教育費も念頭に置きながら、無理なく返済できるローンを組むことが大切。購入時には、頭金を含め住宅価格の25〜30%を用意することが望ましいとされていますが、すぐに貯められる金額ではありません。親に援助してもらうにしても、タイミングが大事。早めに話し合い、準備を始めてください。

教育費はどこまで?

子どもに、できるだけの経験をさせてあげたいと思うのが親心ですが、どこかで歯止めをかけないと際限がありません。でも教育方針は、夫婦でも意外と意見が分かれるもの。大学までは公立でいくのか、それとも私立も視野に入れるのか、塾や習い事にかける負担の限度など、2人の考え方をすり合わせておけば安心です。

生活への想いは男女で違う

預貯金や収入、そして保険以外にも、結婚にあたってお互いに話し合っておきたいことは、まだまだあります。

たとえば収入面で考えた場合、2人で働くのか、1人の収入に頼るのかによって、その後の生活設計は大きく変わります。とくに女性の場合、出産・子育てと仕事の両立は男性以上に厳しく、場合によっては、その時期、収入が期待できないことも頭に入れておく必要があります。

一方、2人で働いているにもかかわらず、彼が掃除や食事など、身の回りのことをやってもらって当然と考えていたら、結婚生活でトラブルが発生するのは、火を見るよりも明らかです。最近では、外部の代行サービスを利用して、仕事と家事の両立をめざすカップルも増えています。家事の分担をどう考えているのか、お互いの本音を知っておきたいですね。

新しい生活に対する想い≠ヘ、男女で差があるのが一般的です。たとえば上で解説しているような事柄について、お互いの考え方を、じっくり確認してみてはいかがですか?

支出の確認からお金の準備へ

教育費の総額は子ども1人あたり平均で1200万円、住宅ローンの平均借入額は2300万円(*)です。人生における巨額支出の双璧ともいえるものですが、すぐに用意できる金額ではありません。

それだけに、大きな支出に対するカップルの方向感を定めておくことが、計画的なお金の準備に結びついていきます。

人生には、4つの貯め時≠ェあると言われています。1つ目は結婚を意識してから実際に結婚するまでの独身期間、2つ目は結婚してから子どもが生まれるまでの期間、3つ目は子どもが生まれてから高校に進学するまでの期間、4つ目は子どもが独立してから定年を迎えるまでの期間です。逆に、主に子どもが高校生、大学生の時期、そして定年後は、貯蓄を取り崩して生計を維持する使い時≠フ時期になります。

何も教育費やマイホーム購入費用の大半を、結婚時に用意しておく必要はありません。要はライフプランに沿って、それぞれの貯め時に、必要な金額を貯めていければいいわけです。

*教育費は幼稚園から高校まで公立、大学は私立(文系)の場合。出所は幼稚園から高校までが2012年度「子どもの学習費調査」(文部科学省)、大学が2014年度「教育費負担の実態調査結果」(日本政策金融公庫)。住宅ローン借入額は「2013年度フラット35 注文住宅融資利用者の主要指標(全体)」(住宅金融支援機構)。

健康面の不安を知り2人でそれに備える

また結婚とお金の問題に、大きく影響してくるのが健康です。

結婚前に、お互いの健康状態を確認しておくことは、2人の人生にとっても、家計面にとっても大切です。入院や手術となれば、医療費もそうですが、その間の収入にも影響がでてきます。またマイホームの購入が厳しくなることも考えられます。健康面の不安は、家計にとって確かにマイナス情報かもしれませんが、あらかじめ知っていれば、2人でそれに備えることができます。それに、健康保険には高額療養費制度といって、毎月の医療費負担が一定以上にならないしくみがありますので、過度な心配はいりません。

最近では、結婚・出産年齢の高まりとともに、不妊治療を受けるカップルが増えています。想像以上に高額の支出となるケースが多いので、公的な助成制度とあわせて、その方面の知識も頭に入れておくと安心です。

知っておきたい制度・手続きイロイロ

もうひとつ、結婚する際に知っておきたい制度や手続きについても押さえておきましょう。

まず、結婚すると健康保険や年金など、社会保険の扱いも変更になる場合があるので気をつけましょう。退職して相手の扶養に入る場合は、扶養に入ってから5日以内に、パートナーの勤め先の総務を通じて、年金事務所などに書類を提出します。また国民健康保険・国民年金に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区町村の役所に書類を提出します。退職後も元の健康保険に残ることもできますが、その場合は、退職日の翌日から20日以内に、健保組合、または協会けんぽの自宅住所地を管轄する都道府県支部に、届け出ます。任意継続といいますが、その期間は2年間なので注意してください。

また子育てやマイホーム購入には、公的な支援制度があります。妻が働いている場合は、健康保険から出産手当金として、給料の3分の2相当の金額が、出産日前42日、出産日翌日以後56日、支給されます。さらに子どもが1歳になるまでは、雇用保険から育児休業給付金として、給料の50〜67%相当の金額が支払われます。自治体によって内容に差はありますが、子どもの医療費を助成する「乳幼児医療費助成制度」もあります。

住宅購入の場合は、原則、最大400万円の住宅ローン減税があるほか、親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合は、原則1千万円まで非課税になります。

健康と家計

会社員であれば、年1回、健康診断を受ける機会があるでしょうし、子宮頸がん、乳がん、大腸がんなど、年齢に応じて各種がん検診の機会も各自治体から提供されています。こうした結果を、結婚前にお互いに確認しておくことも、共同生活を営む上で大切ではないでしょうか?

最近では、「ブライダルチェック」といって、主に、子どもができにくい体質かどうかを診断するサービスもあり、結婚を約束したカップルや、結婚後、早く赤ちゃんが欲しいカップルの間で、ニーズが広がっています。もちろん女性だけでなく、男性用の診断もあります。問診、内診、超音波検査、血液検査、尿検査などが、その主な内容になります。健康診断や、婦人科系の特定健診でチェック済みの内容を外せる場合もあり、検査料金は病院によって様ざまです。

検査内容によっては、早期治療で不妊のリスクを回避できるかもしれませんし、万一、子どもができにくいことがわかっても、それを前提に、治療の計画を含め2人で考えていくことができます。

団信に加入できない…

住宅ローンを組む際には、一般に、団体信用生命保険に加入することが条件となります。でも、何らかの病気があった場合、マイホームを購入しようと思っても、団信に加入することができず、結果、住宅ローンを組めないケースも考えられます。

対策

一般の団信よりも割高になりますが、引受範囲を拡大した団体信用生命保険「ワイド団信」がつく住宅ローンがあります。また団信付保が必須条件ではない住宅ローンもありますが、団信に加入せずに住宅ローンを組むことは、かなりリスクが高いので要注意です。

不妊治療費が高額で大変…

不妊治療を受ける夫婦は増えていて、年間で32万6,000回(*)もの体外受精が行われています。高度生殖医療(人工授精や体外受精)を受ける場合、健康保険が適用されずに自由診療の扱いになるため、1回の費用が数十万円単位となるケースもめずらしくありません。

対策

行政では、配偶者間の不妊治療の費用を一部助成しています。所得制限730万円(夫婦合算)など所要の条件を満たせば、1回の治療につき15万円まで、1年度目は年3回まで、2年度以降は年2回を限度に、通算5年、10回を超えない範囲で助成してくれます。また、治療費は医療費控除の対象にもなります。

*出所:日本産科婦人科学会(2013年度)

勇気をだして話しあおう

家計管理にあたって見落としたくないこと

働く女性が増えたことで、家計の在り方も変わってきています。「男は稼いで、女は家を守る」ことが普通の時代もありましたが、これまで、ご両親が経験されてきた家計管理法が、そのまま子ども達の参考になるとは、必ずしも言えない環境になっています。

夫婦で家計を支え、家事や子育ても分担するなか、どう毎月の収支をやりくりし、無駄遣いを省き、目標額を貯め続けるかについて、今の環境にあったやり方を、知っておく必要があります。

家計の管理方法は、カップルそれぞれで考え方は千差万別で、必ずこうしなければいけないという方法はありません。下のインタビューでFPの平野さんがおススメする、共通財布型≠フ家計管理も、そのひとつの方法です。

ただ、ここで見落としてほしくないのは、家計管理の目的がなんなのかという点です。それはズバリ、ライフプラン達成のためです。2人がめざす生活、家庭の姿、そしてそこに必要なお金の金額が見えていれば、きっと各家庭にあった方法が見つかり、2人で実践していくことができると思います。

ぜひ勇気をだして

最近では、お金のことが心配で、なかなか結婚に踏み切れないという若い男女(とくに男性)も多いようです。昔よりも収入が減ったことがその主な理由かと思いますが、だからこそ、先々を見据えて計画的にお金と付き合っていく姿勢が重要になっています。

そのためにも、お互いが、どんな生活をめざしたいのか、これからのライフプランについて、彼と、しっかり話し合ってほしいと思います。

「お金にうるさい女」「がつがつしている」と思われることを恐れて、本当は彼に聞いてみたいけれどできない、そんな悩みを抱える女性が少なくありません。

でもこれまで紹介してきたことについて、2人で理解を深めることは、結婚後の生活にきっとプラスになるはずです。ぜひ勇気をだして、大好きな彼と、お金について話し合ってみてください。

ここがポイント!

★貯蓄用口座、生活費口座、余暇・予備費口座の3つを用意する

★ライフプランに沿って、貯蓄の目標額を立て、最初にそれぞれの貯蓄用口座に入金する

★2人の生活費口座には、1ヵ月分の食費や水道光熱費、住居費などの基本生活費をお互いに入金する

★貯蓄、生活費を除いて、余ったお金を余暇・予備費口座に入金する

★余暇・予備費は個人の小遣いだけでなく、2人共通の出費に対応できるお金を確保する

★お互いが拠出する金額は、収入額などに応じて、話し合って決める

★個人のお小遣いは、その範囲を明確にした上で金額を決定する

★すべての共通管理口座は、お互いがいつでも確認できるようにする

FPおススメはこれ! 平野泰嗣さん

ひらのやすし

LFC代表。CFP®、1級FP技能士、中小企業診断士、行政書士。

1994年慶大卒。公的金融機関に勤務後、2000年よりFPとして活動開始。2006年にパートナー(妻・平野直子)とともにFPオフィス「Life & Financial Clinic(LFC)」を創立。

共働き夫婦の家計管理

共働き夫婦の家計管理には、一方の収入で生活し、他方の収入を貯蓄にまわす方法や、項目別に支払い担当を決める方法など、様ざまなやり方があると思いますが、私は共通財布型≠フ管理方法をおススメしています。毎月決まった金額をお互いに負担しあう方法で、図表のように口座を、目的に応じて複数にわけて管理すると効果的です。この方法のよい点は、話し合って決めた金額を、お互いに負担しあう形になるので不公平感がなく、さらに生活費や余暇・予備費が共通口座で管理されるため、収支の流れが透明化されるところにあります。ときどき、生活費はお互いで出しあうものの、それ以外は個別に管理し、お互いの給与額やその使い道について知らないご夫婦もいらっしゃいますが、そうした仮面°、通財布では、安定した貯蓄の継続が難しく、かつ無駄遣いの防止ができないので、あまり意味がありません。夫婦といえども、お金の問題は、些細な事で疑心暗鬼になりがちですので、透明性と公平性を保つことは、家計を管理する上で非常に重要です。独身時代のように、稼いだお金を自由に使えず、かつその収支をお互いに明らかにすることに、当初は戸惑いを感じるかもしれません。でも、家計管理は手段であり、その目的は2人がめざすライフプランを実現することにあります。2人の新しい生活を、より実りあるものにする手段として、お財布をひとつにしてがんばってみてください。

(記事提供:ニッキンマネー2015年6月号 特集Ⅰ)

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