出産で受け取れる給付

幸せいっぱいの妊娠・出産期。

その一方で、出産費用が心配という人も多いことでしょう。でも健康保険では、そんなお金の負担を和らげてくれる制度が用意されています。

プロフィール

福島 えみ子 (ふくしま えみこ)

リュクスセオリーFPサロン代表、CFP®、1級FP技能士

銀行、法律事務所に勤務後、お金の知識の有無で人生は左右されることがあるとFP資格を取得。転機の多い女性にあわせたフレキシブルなプラン、人生を楽しむためのプランづくりが得意。講演・執筆・相談と幅広く活動中。

出産費用は約50万円

厚生労働省の調査によると、医療機関に支払う出産費用の全国平均は48万6734円(2012年度)。ただこれは病院に支払うお金だけですから、ベビー用品の購入代金などを含めると、かなりまとまった金額になりそうです。

通常の妊娠や出産の場合、病気ではないために健康保険が使えず、かかった医療費は全額自己負担になってしまいます。でも、それほど心配する必要はありません。実は健康保険では、妊婦さんの負担を軽くしてくれる給付制度が2つ用意されています。それが、「出産育児一時金」と「出産手当金」です。

健保・国保共通の「出産育児一時金」

まず、出産した時にまとまったお金を受け取れるのが「出産育児一時金」で、子ども1人につき原則42万円が支給されます(双子の出産なら、倍額の84万円)。また、妊娠22週未満で早産した場合や、残念ながら死産・流産であった場合でも、妊娠85日以上であれば、満額支給されます。

ところでこの出産育児一時金は、受給の際に「直接支払制度」を利用することができます。これは、給付金のやり取りが医療機関と健康保険組合との間で完結するしくみで、妊婦さん自身がまとまったお金を用意しなくても済むのがメリットです(図表)。実際にかかった出産費用が支給額を超えていれば、医療機関へ差額を支払う必要がありますが、少なく済んだ場合は、請求により差額分を受け取ることができます。また、もしも医療機関によってこの制度が利用できなくとも、「受取代理制度」の利用、あるいは出産費資金貸付制度で無利子でお金を借りる方法もあります。

出産育児一時金は、自営業者などが加入する国民健康保険と、お勤めの方の健康保険共通の制度ですが、後者では「家族出産育児一時金」も用意されており、被扶養者である家族が出産した時も受給することができます。

健保独自の「出産手当金」

また、お勤めの方の健康保険では、独自の給付制度もあります。「出産手当金」がそれで、妊娠4ヵ月以上で出産のため仕事を休んで給与が受けられない時、出産の日以前42日(多胎妊娠は98日)から、出産の日の後56日の範囲で支給されるお金です。受給額は、ほぼ1日分の給料に相当する「標準報酬日額」の3分の2が、休んだ日数分支払われます。

たとえ給与の支払いがあっても、その給与が出産手当金の額より少なければ、その差額が支給されます。また、出産日が出産予定日より遅れても、遅れた分を含めて支払われます。さらに出産前後に退職した場合でも、退職日まで1年以上会社に勤務(「被保険者期間」と言います)しており、それまでに出産手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も引き続き受給することが可能です。ただし退職日時点で、休職していることが条件になりますので、くれぐれも注意してください。

そして、この出産手当金を受け取れるのは、実際に働いている方本人(被保険者)が出産する場合に限られる点も、出産育児一時金と混同しないようにしましょう。

ところで、冒頭に通常の出産では健康保険が使えないと書きましたが、帝王切開などの異常分娩では、健康保険の療養の給付(3割負担)や、医療費が高額になっても一定限度の負担で済む高額療養費制度が利用できます。

人生で幸せな時を安心して過ごせるよう、どんな制度があるのか普段から覚えておきましょう。

(記事提供:これでスッキリ健康保険AtoZ2015年5月号)

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