こんなとき遺言があれば

お盆の親戚寄り合いの席で、叔母が「遺言書を書いておいてくれて良かった」としみじみと話していました。うちでは、考えたこともないのですが、用意したほうがいいでしょうか?

尚美さん(50歳・主婦)

遺言
人の生前における最終的な意思を表示し、遺言者の死後にそれを実現させるために制度化されたもの。遺言書の作成には厳格な要件があり、不備があると無効となる。

プロフィール

女屋 哲也(おなや てつや)

1級FP技能士、CFP®、証券外務員、DCマイスター、宅地建物取引主任者、行動経済学会会員

FP工房 女屋FP事務所所長、高崎経済大学非常勤講師、群馬県金融広報アドバイザーなどマルチに活動。見かけによらずアウトドア派で、尾瀬、富士山から屋久島まで日々、山行に励む。招き猫収集家でもある。

印籠の効力を事前準備

遺言書のイメージがあまりよくないのは、色いろな理由があると思います。「遺言書なんて、縁起でもない」、あるいは「そんなに財産があるわけじゃない」、「書くのが面倒くさい」などが、その主なところかと思います。また、お金の話を面と向かってすることを好まない、日本人特有の気質にも起因しているのかもしれません。

しかし核家族化が進み、権利を主張しがちな風潮となり、相続が争族≠ニなる可能性が増加していることは、紛れもない事実です。「立つ鳥跡を濁さず」と言います。将来の相続が滞りなく遂行されるよう、早めに対策を考えておきたいものです。

そのためにも、御老公水戸黄門さまの印籠のような効力を発揮する遺言書の作成は、検討に値すると思います。

こんなとき遺言があれば…

実際に、どんなケースで遺言書の作成を検討すべきか、主な例を10項目ほど挙げてみました。ご自分に当てはまるケースがあるか、参考にしてみてください。

①夫婦の間に子どもがいない ②主な財産が自宅の土地と建物のみ ③自分の会社を後継指定した子どもにつがせたい ④介護を必要とする配偶者や障害のある子どもがいる ⑤息子の嫁など、とくに世話になったが、相続権のない特定の人に財産を渡したい ⑥内縁の妻、内縁の夫がいる ⑦相続人の数が多い、または音信不通の子どもがいる ⑧家族間の仲が悪い ⑨再婚している ⑩独身で身寄りがない、などです。

それぞれ、遺言書を作成しておくべき理由などを説明します。①は、遺言がないと親や兄弟が相続人となり、配偶者が全部を相続できない場合があります。②③は、自宅や会社の株式などが主たる相続財産の場合、分割してしまうと、本来の用を成さなくなってしまう懸念があります。④は、自分が亡くなったあと、行く末が心配な配偶者や子どもの面倒をみてもらうために、負担付きの遺贈ができます。⑤⑥は、法定相続人以外に世話になった人へ、財産を遺贈することができます。⑦は、多数の相続人がいても、手続きをスムーズに運ぶことができます。⑧⑨は、相続時の揉め事を払拭することができます。⑩は、独身でも自分の意思を託すことができます。

今、こうして挙げたケースは、ほんの一例に過ぎません。私が最近、相談を受けたケースは、養子縁組に絡むものでした。再婚した後妻に連れ子がいる場合、養子縁組すれば、実子と同じく相続権が発生します。再婚と同時に養子縁組を済ませていれば良かったのですが、手続きをせずに現在に至り、配偶者が病気のため意思表示ができない状況となり、養子縁組の手続きが不能となったため、遺言書による財産の遺贈を検討することとなりました。

遺言に絡む相談は、本当にケースバイケースです。それも当然、相続が1人ひとりの人生に伴うものだからです。

真意を伝える

遺言とは漢字のとおり、「人が亡くなる前にのこしておく言葉」のことです。遺言書に綴る内容は、財産の相続についてのことです。しかし、生前には面と向かって言いづらかった、家族への思いや引き継いで欲しい事柄などを付言することもできます。

家族への感謝や自分の人生への讃歌を記し、相続人への自分の真意を伝えることが、最大の相続対策であり、本人が行う人生最期の最も重要な意思表示なのです。

(記事提供:ニッキンマネー2014年9月号 FP工房 女屋事務所 相続なんでも相談室)

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