生命保険のきほん

生命保険は、実は、いたって簡単なしくみの商品です。保険会社に保険料を支払う・保険会社は保険金支払い事由が発生したら保険金を支払う―。基本的には、それだけです。それだけのことなのですが、「生命保険は難しい」と感じる人が大半です。原因は、どうやら生命保険の「難解に思える契約用語」や「複雑に見える商品内容」にありそうです。

契約時に何度聞いてもわからないので、結局、保険料と保険金額だけを承知して契約してしまった人は多いと思います。通常の生命保険では、保険料の支払い総額は数百万円になります。そんな大きな買い物を保険料と保険金額だけで決めてしまってよいのでしょうか。今月号のア・ラ・カルトは、難解に思える契約用語や複雑に見える商品内容に焦点をあてて解説します。生命保険のきほんをきちんと理解して、正しい生命保険選びに役立ててほしいと思います。

生命保険契約の基礎用語

図表1は、特約付き終身保険の保険証券イメージ図です。イメージ図ですが、記載事項は実際の保険証券と変わりません。金額は、編集部が仮においたものです。赤字部分に注目してください。ここに、保険の内容がすべて記載されています。赤字部分の意味がわかれば、保険内容が理解できます。

契約者・被保険者・受取人

生命保険契約では、必ず保険契約者、被保険者、保険金受取人を決めなければなりません。

「契約者」とは、生命保険会社と保険契約を結んで保険料を支払う人のことです。「被保険者」とは、保険の対象者、つまり保険金支払いの原因となる人です。「保険金受取人」は、保険金を実際に受け取る人です。契約者・被保険者・受取人が同一人物である必要はありません。それぞれ違う人でもかまいません。

3者の相互関係を図表1に即して説明します。被保険者の死亡年齢は55歳とします。この契約では、被保険者は、契約者のAさん自身です。Aさんの死亡によりBさんに主契約300万円と定期保険特約3千万円の死亡保険金が支払われることを示しています。

3者が全員別の場合は、どうなるのでしょうか。契約者をAさん、被保険者をBさん、受取人をCさんとします。その場合でもBさんが死亡した場合に、Cさんに主契約の300万円+定期保険特約の3千万円が支払われます。

主契約と特約

主契約とは、その生命保険の「基本的保障」、特約は「主契約の付加的な保障」のことです。終身保険は、原則、保険料の払込終了後も死亡保障が継続する生命保険です。終身にわたる死亡保険金の支払いが基本的保障です。

図表1の契約では、主契約の保険料払込期間は20年間です。払込期間中はもちろん、終了後もAさんが死亡すれば死亡保険金300万円を保険金受取人のBさんに支払うことを示しています。

特約は、主契約に付加して主契約の保障内容を充実させるためのものです。このため主契約への特約の付加には、一定のルールがあります。①主契約だけの契約はできるが特約だけの契約はできない ②主契約に特約は何本でもつけることができる ③主契約が満期や解約によって消滅した場合、特約も消滅する―などです。

生命保険は、基本的には主契約と特約の組み合わせでできています。主契約と特約の保障内容と、その組み合わせ方がわかれば、その生命保険がどういうものかわかります。

保険期間と払込期間

保険期間とは、保険会社が保険金支払いを保障する期間のことです。保険会社は、この期間内に発生した保険金支払い事由に対して保険金・給付金を支払います。払込期間とは、文字通り保険料を払い込む期間のことです。

図表1の主契約の保険期間は終身です。つまり被保険者の死亡時点までが保険期間ということになります。特約は違います。すべて有期となっています。

疾病入院特約は、病気で入院した場合、1日あたり5千円の給付金を支払うというものですが、保険期間は「20年間 60歳まで」です。期間経過後は、特約は消滅するので、病気入院しても給付金は支払われません。災害・がん入院特約も同ようです。

定期保険特約は、主契約の死亡保険金額の不足分をカバーすることが目的です。保険期間は、他の特約とちょっと異なります。特約の自動更新がセットされているので、3千万円の死亡保険金の支払いが満60歳になるまで保障されています。ただし、更新後の保険料は高くなります。全体でどのぐらい高くなるのかを示しているのが、保険料内訳の◎以下です。

保険料と払込方法

保険料は、保険料の内訳の部分に記載されています。毎月の主契約部分の保険料と特約部分の保険料が分けて記載されています。

保険料の払込方法は、毎月払い・半年払い・年払い・一時払い―の4通りあります。一時払いというのは、契約時に保険期間全体の保険料を1回で払い込む方法です。図表1では、口座振替で毎月振り込む「毎月払い」を採用していることを示しています。

前納と一括払いというものがあります。これは、毎月・半年・年払いの保険料をまとめて払い込む方法です。前納・一括払いされた保険料は、保険会社が預かって、本来の払込期日が来るつど保険料に充当されます。一括払いは、一時払いではありません。

配当金

そもそも生命保険の配当金とは何でしょうか。

保険料は、3つの予定利率(予定死亡率・予定利率・予定事業率)にもとづいて算出されます。しかし、実際の利率が予定利率どおりになるとは限りません。実際の利率と予定利率との差によって剰余金が発生した場合、剰余金を契約者に還元します。それが配当金です。配当金は、いわば予定利率にもとづいて算出した保険料の事後清算金です。

図表1の「配当金支払方法」は、その剰余金を契約者に支払う方法のことです。支払い方法は、積立・買い増し・相殺・現金払いの4通りあります。

積立は、配当金を保険会社に積み立てておく方法です。保険金支払い時に保険金と一緒に支払われます。買い増しは、配当金を一時払いの保険料と扱って新たな保険を買い増していく方法です。

相殺は、配当金を保険料と相殺する方法です。配当金の分だけ保険料負担が軽減されます。現金払いは、文字どおり配当金を現金で支払う方法です。

配当金は、剰余金が発生しなければ出ません。無配当の保険もあります。無配当型の保険は、配当金が出ない代わりに経験値に近い予定利率を用いることによって保険料を安く設定しています。

告知義務

告知義務とは、契約者・被保険者が保険会社に対して自らの過去の傷病歴や現在の健康状態、職業などについて、「事実をありのままに告げる」義務のことです。口頭の告知は不可で、必ず書面で告知が求められます。

告知義務違反、つまり事実を告げなかった・事実と異なることを告げた―などの場合は、保険会社から契約が解除され、保険金や給付金は受け取れなくなります。

解除時点までに払い込んだ保険料は、どうなるのでしょうか。解約返戻金のある保険の場合は、解除時点での解約返戻金が戻されます。医療保険のように解約返戻金がほとんどないものは、ほとんど戻りません。実際の事例では、解約返戻金のある生命保険でも解約返戻金がほとんど発生しない段階での解除が多いようです。

ただし、保険会社の営業職員が契約者または被保険者に「事実を告知しないように、または事実と違うことを告知するように勧めた」場合は、保険会社は解除できません。その場合の保険契約は有効に存続し、保険金や給付金は支払われることになります。

責任開始期日

責任開始期日とは、保険会社が引き受けた生命保険の保障を開始する日のことです。図表1の契約日(始期)がそれにあたります。保険会社は、この日から保険金支払事由が発生すれば保険金を支払います。保険期間の起点も、この責任開始期日からです。

生命保険は、申込書に署名・押印して営業社員に渡せば、契約成立というわけではありません。保険会社が「保険の引き受け」を承諾した後に契約が成立します。保険会社は、この承諾をもって保険金支払いという保障責任の履行を開始します。

生命保険の契約は、①申込書提出 ②告知書提出(または保険会社指定医の検査) ③保険料の払い込み ④生命保険会社の承諾―という手続きを経ます。④の時点が契約成立の段階です(③と④が逆の場合もあります)。保険証券は、その後に発行されます。

保険金と税金

生命保険の「保険金」にも税金がかかります。課税される税金の種類は、契約者・被保険者・受取人の関係で異なります。税金の種類が異なるということは、税率も異なるということです。

図表2は、契約者・被保険者・受取人の関係ごとの税金の種類です。異なる理由の説明は割愛しますが、契約者・被保険者・受取人を誰にするかで適用される税金の種類が変わることがわかります。契約者・被保険者・受取人を誰にするかで、お金の流れが変わるからです。流れ方によって適用される税金も変わるのです。

生命保険の目的は、死亡保険金によって、のこされた家族の生活を保障する点にあります。実際、契約者と被保険者を同一人にする形で遺族にお金を渡そうとする人が大半です。このため相続税の対象となる場合には、税制面の優遇措置があります。死亡保険金の非課税限度額制度です。

非課税限度額は、「500万円×法定相続人の人数」です。法定相続人が4人なら非課税限度額は2千万円です。死亡保険金を3千万円とすれば、2千万円を除く1千万円に相続税がかかります。

生命保険を検討する

図表3は、個人向けのおもな生命保険です。このうち被保険者の万一の死亡に備える定期・養老・終身の3つがコアとなる生命保険です。3つを中心に契約する場合の基本的視点を考えます。

定期保険は、保険期間中に死亡した場合、死亡保険金が支払われる生命保険です。生命保険の原点ともいうべき保険です。

養老保険も死亡保障が基本的保障ですが、保険期間終了後も生存していれば、死亡保険金と同額の満期保険金が支払われます。保険料の一時払い型養老保険は、貯蓄性保険の代表格です。

終身保険も定期保険と同ように死亡保障保険ですが、保険料払い込み後も終身にわたって死亡時に保険金が支払われます。保険期間と保険料払込期間が一致しない点が定期保険と異なります。

本質的役割は基本的保障

生命保険は、第1章で説明した主契約、つまり基本的保障は何かという点をきちんと押さえれば理解しやすい商品です。保障内容や保障額、保険料で頭を痛めるのは、それからで十分です。

定期保険と養老保険、終身保険に共通する点は一体何でしょうか。それは、「死亡保険金」の支払いです。被保険者が死亡したときに死亡保険金を支払うことが、この3つの生命保険の基本的保障です。

養老保険は、保険期間終了の満期時に被保険者が生存していれば、死亡保険金と同額の満期保険金が支払われます。終身保険は、保険料払い込み終了後も終身死亡保険金の支払いが保障されます。

養老保険と終身保険は、一見すると定期保険と違うように見えます。養老保険の「満期保険金」や終身保険の「終身保障」は、それぞれの商品特性であって、基本的保障ではありません。厳密に言うと、養老保険も終身保険も基本的保障は、死亡保障です。つまり定期保険と同じなのです。

他の生命保険も同ようです。医療保険は「入院や所定の手術をした際に給付金が支払われる」、個人年金保険は「契約時に定めた年齢から年金が支払われる」、介護保険は「所定の介護状態になれば一時金や年金が支払われる」、子ども保険は「入学・進学にあわせて祝い金や満期保険金が支払われる」―点が基本的保障です。

生命保険の本質的な役割は、基本的保障部分にあります。目的に合う基本的保障は何か―を明確にすることが生命保険選びの第一歩です。

特約も1つの生命保険

生命保険を「複雑に見える商品内容」にしている原因の1つが特約の存在です。しかし、特約も「基本的保障を持つ1つの生命保険」と理解すれば、そう難しい話ではなくなります。

図表1の終身保険には、定期保険と災害入院、疾病入院、がん入院の4つの特約がついています。特約の言葉をはずせば、それぞれが基本的保障を持つ生命保険となります。定期保険特約は、死亡保険金が支払われる定期保険、疾病入院特約は、病気で入院すれば給付金が支払われる医療保険という具合です。

特約は、あくまでも主契約(基本的保障)を補完するものです。特約だけの契約ができないということは、生命保険における特約の地位をよく示しています。生命保険を考える場合は、まず基本的保障を考え、次に特約の必要性を検討するのが道順だと思います。

特約は、契約後でも主契約に付加することができます。最初から万全を期して重装備にすると保険料負担も大きなものになり、住宅資金や教育資金の準備に影響を及ぼすこともあり得ます。

特約は、必要な時期に必要な備えをするという発想で検討してもよいと思います。この後述べますが、主契約の死亡保険金を減額することもできます。子育てを終えたら死亡保険金を減額して、減額分の保険料をがん入院特約の保険料にあててもよいのです。

保険の目的は変わる

主契約・特約を問わず、たとえば大きな死亡保険金は一生涯必要でしょうか。言葉を変えると、生命保険の加入目的は、一生涯変わらないものでしょうか。

そんなことはありません。長い人生の間には、家族構成も変わります。のこされた家族のためにと頑張って大きな死亡保険金の保障をつけても子どもが成人すれば必要性はなくなります。むしろ、医療や介護関係の保険の必要性が出てくるかもしれません。

年齢を積み重ねることによって保険の目的が変わることがあり得ます。とくに収入減や失職で保険料の財源が減少すれば、目的変更は待ったなしです。先々の目的変更も視野に入れて、生命保険の主契約や特約の内容を検討してほしいと思います。

生命保険は、目的の変更に伴って保障内容を見直すことができるのでしょうか。答えは、「できる」です。見直しは、既存の保険を解約して新しい生命保険に加入し直すのが一番簡単な方法です。しかし、解約返戻金があっても払い込んだ保険料の全額は返ってきません。そこで生命保険には、「転換」という制度があります。

転換で契約し直す

転換は、既存の契約を活用して新しい生命保険に加入し直す方法です。「現在の契約の積立部分や積立配当金を『転換(下取り)価格』として、新しい契約の一部」(公益財団法人生命保険文化センター・ホームページ)に充当するので、新たに契約するよりは保険料が軽減されます。

転換とはいっても新しい生命保険の契約です。ですから、主契約(基本的保障)の保障額や保険期間、付加する特約、保険料・保険料払込方法など契約内容を全面的に変更できます。

ただし、①同じ生命保険会社でなければ利用できない ②転換できない保険種類がある ③保険料は転換時点の年齢・保険料率で再計算される ④保険会社によって取扱基準が異なる―などの制約もあります。

既存の契約を継続したまま保障内容を見直すことも可能です。方法は、①特約の中途付加 ②減額 ③特約の解約―の3つです。①は、既存契約にはないがん入院特約などを付加することです。

減額は、基本的保障や付加的保障部分の保険金額を減らすことです。減額分だけ保険料負担が減ります。主契約部分だけを減額した場合、特約の保険金や給付金も減る場合があります。

特約の解約は、不要な特約を解約することです。解約分の保険料負担が減ります。解約した特約に解約返戻金があれば、受け取ることもできます。特約の種類によっては、他の特約も解約される場合があるので注意が必要です。

生命保険に対するニーズ

図表4は、公益財団法人生命保険文化センターの「平成25年度生活保障に関する調査」(サンプル数4043)からの抜粋です。調査対象者に『力を入れたい保障準備』は何かを聞いたところ、図表のような結果(上段2013年・下段2004年)になりました。

死亡保障から生存保障へ

9年間の対比ですが、「力を入れたい保障準備」は、男女ともに介護・医療・死亡保障の割合が増加しています。老後保障は減少しています。増加・減少割合には男女間に大きな相違はありません。保障準備に関する一般的傾向を表しているとみてよいでしょう。

生命保険に対するニーズは、「死亡保障から医療・老後(年金)・介護などの生存保障」に変わりつつあると言われています。調査結果を見る限り、伝統的な死亡保障へのニーズも、まだ強いものがあるようです。

調査では、4つの保障領域に関する『不安意識』の有無も聞いています。具体的には、①病気・けがに対する不安 ②老後生活に対する不安 ③死亡時の遺族の生活に対する不安 ④自分の介護に対する不安―の4つについて、それぞれ不安意識があるか、ないかを聞いています。

その結果、①は90%、②は86%、③は68%、④は90%の人が「不安感あり」と回答しました。医療・老後・介護に関しては、実に回答者の9割もの人が不安を覚えているという結果でした。

「保障準備」では、死亡保障の必要性を考える人が一番多いのですが、「不安意識」の面からは死亡保障を重視する人の割合はそれほどでもありません。現在は、自分や家族の医療・老後・介護分野の保障に目を向けている人が多いことが伺えます。

医療・老後・介護分野の保障準備の必要性も着実に増えています。そうした事情も考慮すると生命保険に対するニーズは、死亡保障より医療・老後・介護などの生存保障に移りつつあるのは、間違いないようです。

公的保障の不足分を補う

最後に生命保険を検討する際に注意してほしいことを1つ挙げておきたいと思います。死亡保障に限らず、医療・老後(年金)・介護保障の生命保険でも保障額は現実に必要な金額をベースに設定するということです。

総務省の家計調査などによれば、4人家族の場合、1ヵ月の生活費は約28万円ほどだそうです。仮に4人家族の父親が死亡したら、のこされた遺族は無収入になるのでしょうか。そんなことはありません。公的保障があります。

父親が会社員だったなら、遺族には子どもが成人するまで遺族基礎年金・遺族厚生年金が給付されます。成人後も妻には、年齢に応じて遺族厚生年金や老齢基礎年金・老齢厚生年金などが給付されます。決して十分な金額ではないかもしれませんが、無収入という事態は避けることができます。

住宅ローンがあっても団体信用生命保険によって、遺族は残債の支払いを免除されます。会社によっては、死亡退職金や弔慰金を支払います。のこされた妻がパートに出て収入を得ることもあるでしょう。公的保障制度を考慮すると生命保険だけで、すべてに備える必要はなくなります。

医療・老後・介護分野にも公的保障制度があります。医療分野には健康保険制度、介護分野には介護保険制度、年金分野には、国民年金・厚生年金などの公的年金制度があります。

国民が強い「不安を覚える」医療・老後・介護の分野には、万全・十分ではないかもしれませんが、公的な保障のしくみは整っています。公的保障制度がカバーする範囲・金額を予め把握して、必要と見込まれる金額との不足分を生命保険で補うという発想で検討してほしいと思います。

生命保険には、保険料がかかります。特約にも保険料は必要です。不安感だけを膨らませて保障額を決めることは、保険料負担の増大を招くだけです。保険期間中に解約ともなれば、払込保険料がムダになるだけです。不測事態への備えは必要ですが、備えのために現在の生活を犠牲にすることはできません。「不足分を補う」という視点を忘れないでください。

(記事提供:ニッキンマネー2014年6月号 お金のア・ラ・カルト マネーライフの基本)

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