初心者のための投資信託

投資信託が好調です。一般の人が購入できる公募投信の純資産総額は、2013年の1年間に18兆6537億円増加しました。増加額の8割は、株式投信によるものです。2013年12月末の日経平均株価は、1万6291円。1年間に、なんと5896円も値上がりしました。株価上昇を背景にした株式投信購入者の増加が純資産総額増加の主因です。

身の回りで購入者が増えていると感じている人もいるかもしれません。今月号のア・ラ・カルトでは、「投信は知らない、NISAも無縁、ひたすら預金」という投資信託初心者を対象に、投資信託のイロハを解説します。投資信託は、「運用」の入門商品です。リスク商品ですが、預金とは違う魅力やメリットもあります。しっかり学んで金融商品の選択肢の1つに加えてみてください。預金一色の世界とは異なるマネーライフの世界が広がると思います。

【第1章】投資信託の基礎

投資スキームのことです

投資信託は、どのような金融商品なのでしょうか。「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配されるしくみの金融商品」(投資信託協会ホームページ)です。

預金と比べると特徴がわかります。預金は、預金1本ごとに利息を付けて払い戻されます。利息を運用益とすれば、預金は、預金者1人ごとの「単独運用」の金融商品です。投資信託は、不特定多数の人の資金をまとめて運用する「合同運用」の金融商品です。

図表1は、投資信託のしくみです。「おやっ」と思いませんか。肝心要の投資信託という金融商品名がどこにも出てきません。実は、投資信託は、何か具体的な形のあるものではありません。

図表には、投資家・販売会社・運用会社・信託銀行の4者が登場しています。4者は契約で結ばれた有機的結合体です。それぞれが契約にもとづく役割を遂行して「投資→収益確保→収益分配」を図る投資スキーム(しくみ)を投資信託と言います。図表のしくみ全体が投資信託なのです。

購入申込書は、契約書であると同時に購入した投資信託の『しくみ書』です。投資信託の個別名称は、ファンドの名前であって投資信託の名前ではありません。

投資の世界では、投資家から集めた資金を専門家が協同で一括運用するしくみを『集団投資スキーム』と言います。集めた資金がファンドです。投資信託は、集団投資スキームの1つです。

運用会社がキー・マン

集団の構成員である販売会社・運用会社・信託銀行は、どのような役割を果たしているのでしょうか。役割がわかると、投資信託も具体的にイメージできます。

投資スキームの中心は、運用会社です。運用会社は、投資信託の起点となるファンドを設定します。設定とは、運用目的(例・安定配当)や運用資産の種類(例・国債や株式)を定めたファンドを作る(組成)ことです。

そして、運用目的や運用資産の方針にもとづいて実際の株式・債券の購入や売却などを信託銀行に指示(運用指図)します。運用会社は、ファンドのヘッドクオーターであり、キー・マンです。

販売会社は、運用会社が組成したファンドに投資する投資家を募集します。投資家のお金がファンドに入金されるとファンドは、実体を持つことになります。

販売会社は投資家にとって大切な存在です。相談を通じて投資判断を助けるほか、投資家としての適格性も確認してくれます。販売会社の確認機能は、無茶・無理な投資行動を抑制して、投資家を守る役割を果たします。

実務面でも大切な存在です。投資家の口座を管理するほか、口座をベースに購入・換金代金や分配金・償還金の処理も行ってくれます。販売会社は、投資家と投資信託を結ぶ仲人役です。

契約型が主流です

信託銀行は、2つの重要な役割を担っています。1つは、運用会社の指示にもとづいて実際の株式や債券を金融市場で購入したり売却したりする運用実行役の役割です。株式配当や債券利子、売却益の受け取り・管理なども、この役割の1つです。

もう1つは、保有する株式や債券など運用資産の安全な管理です。そのために信託銀行は、ファンド専用の勘定を設けて、他の資産と切り離して管理します。これを分別管理と言います。

分別管理は重要です。運用会社による勝手な資産処分を防止するほか、運用会社・販売会社・信託銀行が破たんしても資産を守ってくれるからです。運用会社は、信託銀行と信託契約を結んで、2つの役割を信託銀行に委託しています。「投資」して「信託」するので投資信託なのです。

信託銀行と信託契約を締結しているファンドを契約型投信と言います。公募投信の2013年12月末純資産総額は87兆2061億円ですが、このうちの9割以上が契約型投信です。日本における投資信託の主流です。

固有のメリットがあります

投資信託には、他の金融商品にはない固有のメリットがあります。①少額から購入できる ②分散投資ができる ③専門家により運用される ④資産価値がわかりやすい―の4点です。

公募・契約型の投信であれば、大半が1万円程度から購入できます。株式や債券の直接購入は、最低でも数十万円単位の資金が必要です。投資信託なら少額でも運用にチャレンジできます。

投資の基本は、投資先を複数化してリスク分散を図る「分散投資」です。1人で分散投資をしようとすると、相当な手元資金が必要です。投資信託なら1万円からでも分散投資が可能です。

一般の人が株式や債券などの専門知識を得るには時間がかかります。内外の金融市場の動向など、運用上必要な情報を得ることも容易ではありません。『情報の非対称性』は、運用の世界では致命傷となります。

ファンドの運用は、知識を身に付け、内外の金融動向を熟知し、最新の情報にアクセスできる運用のプロが行います。一般の人に比べて優位性は明らかです。個人では買えない・買いにくい海外の株式・債券にも投資できます。

ファンドの基準価額は、新聞紙上などでわかります。ファンドの資産価値や値動きが毎日、しかも身近に確認できます。以上の4点を他の金融商品と比較すれば、メリットが実感できます。

破たんしても大丈夫

最後に投資信託の安全性を考えてみたいと思います。安全性とは、投資信託という投資スキームの安全性です。第2章で述べるリスクのことではありません。

先に運用資産は、信託銀行で分別管理されているので運用会社・販売会社・信託銀行が破たんしても大丈夫と書きました。大丈夫な理由を個別にみてみましょう。

まず運用会社です。運用会社は、ファンドの設定と運用の指示をするだけで、運用資産の保管・管理はしていません。運用資産は、信託銀行が運用会社からの信託財産として保有・管理しています。

そもそも運用資産を持っていないのですから、破たんしても雲散霧消することはありえません(破たんした場合、運用資産は他の運用会社に引き継がれるか、繰り上げ償還されます)。

販売会社も同じです。販売会社は、投資家の募集と投資家と各種の資金取引を行うだけです。投資家の購入代金は、運用会社を経由して、信託銀行が信託財産の形で保有・管理しています。破たんしても投資家には、何の影響も及ぼしません。

最後が運用資産を保有・管理する信託銀行です。信託財産は、法律で銀行自身の資産と区分して管理することが義務づけられています。これが分別管理です。

実は、運用資産の所有者は信託銀行です。しかし、分別管理されていれば信託銀行の所有資産ではないので、破たんしても債権者は手が付けられません。運用資産は無傷で残ります(実際に破たんした場合、分別管理資産は基準価額で解約されるか、他の信託銀行に移管されるので投資家の資金が消滅することはありません)。

資産保全の観点から見ると、投資信託はきわめて安全性の高い投資手段といえます。

【第2章】リスクとコスト

投資信託は時価の商品です。毎日ファンドのなかの資産を時価評価します。時価評価した資産の合計額が純資産総額です。純資産総額を取引単位である口数で割ったものが基準価額です。売買は、基準価額にもとづいて行われます。

資産価格を毎日時価で洗い替えするので、基準価額は毎日変動します。変動によって収益や損失が発生するのです。収益と損失も投資家に帰属します。リスク商品といわれる所以です。

投資信託の代表的リスクは、価格変動リスクですが、リスクはそれ以外にもあります。また、投資信託は、意外に費用のかかる商品です。投資を考える前に、どんなリスクがあるのか、どんな費用がかかるのかを押さえておく必要があります。

メカニズムが重要です

図表2は、投資信託のリスクの種類とその内容です。おもなものは、価格変動リスクと為替変動リスク、信用リスク、金利変動リスクの4つです。投資信託のリスクは、最終的には価格変動利リスクに集約されます。ですから、リスクを知ることも大切ですが、それ以上にリスクの所在と伝達のメカニズムを知ることが重要です。

たとえば、国内と海外の債券を運用するファンドの場合です。国内の債券価格は、長期金利の影響を強く受けます。金利が上がれば、債券価格は下落(金利変動リスク)します。海外の債券も円高になれば債券の円換算額が減少(為替変動リスク)します。

国内債券の価格下落と海外債券の円換算額減少により資産合計額も減少します。資産額の減少は、ファンドの基準価額の下落に直結します。海外債券の場合は、円に換算した利子受取額も円高になると減少します。海外株式の配当金も同ようです。リスクの相互関係と発生のメカニズムは、これ以外にも多数あります。メカニズムを熟知しないと適切な投資判断はできません。

軽減方法があります

投資信託には、リスクを軽減する方法も組み込まれています。(1)資産の分散 (2)長期保有 (3)時間の分散―の3つです。

資産の分配は、投資対象を1つの資産に限定しないことです。分散投資をすれば、リスクも分散されます。分散のしかたも多様です。特定国の資産に集中しない、複数の通貨の資産に分ける、反対の値動きをする資産にそれぞれ投資する―などです。

市場は、短期的には大きく変動しますが、5年、10年のタームで見ると変動の幅は小さくなる傾向にあります。変動幅が小さいと変動によって発生するリスク量も小さくなります。

時間の分散とは、一度に全額を投資するのではなく、何回かに分けて投資する、毎月一定額を積み立てるなどの方法で「購入時期を分散」させることです。

時間の分散によって価格変動リスクの最小化が可能です。毎月一定額を積み立てる積立投信は、「時間の分散」の考え方そのものの金融商品です。

個人で分散投資のメリットをフルに得ようと思うと大きな資金が必要になります。投資信託なら1万円程度の金額でメリットをフルに享受できます。

注意が必要 保有時の費用

次にコストです。コストとは、具体的には、費用と税金です。図表3は、費用と税金を整理したものです。公募・契約型投信の大半は、図表に記載した費用と税金の支払いが必要です。

費用で特に注意が必要なのは、保有時の費用です。費用は、すべてファンドの資産から差し引かれます。投信購入者が直接支払うわけではないので、気づきにくいのですが無視できない金額です。

信託報酬と監査報酬は、一定率・一定額ですが、売買委託手数料は、保有期間中の資産の売買頻度によって変動します。

では、実際にどのぐらいかかるのでしょうか。目安ですが、販売手数料は購入価格の3%前後、保有時の費用が合計1%前後、信託財産留保額0・3%前後のファンドが一般的です。100万円でファンドを購入して1年後に換金した場合、1年間にかかる費用は4万3千円程度になります。

費用は、ファンドの保有期間を長くすればするほど負担率は低下します(第3章参照)。コスト面からは、短期売買よりも長期保有が有利です。はじめて投資する場合は、長期運用の視点からファンド選択を心がけてください。

最後に税金です。税金は、証券優遇税制の廃止・少額投資非課税制度(NISA)の創設に伴い2014年1月からすっきりしたものになりました。公募株式投信と公社債投信の違いは、図表3を参照してください。税率は、ともに分配金・譲渡益の20・315%です。

公募株式投信は、確定申告時に他の譲渡損失と損益通算できるメリットがあります。NISAは、年間投資額100万円までは非課税です。

【第3章】ファンドの種類と選び方

投資信託には、名前がついていますが、それらはすべてファンドの商品名です。商品名だけでは、どんな投資信託なのかわかりません。それを知るためには、投資信託の基本的な形や種類を理解する必要があります。

購入できるのは公募の契約型・会社型の投信

投資信託には、公募と私募の2つの募集方法があります。募集とは、資金の集め方のことです。私募は、機関投資家や法人など特定少数の人を対象に投資を募る方法で、一般の人は対象外です。公募は、対象者を限定せずに不特定多数の人から投資を募る方法です。

公募投信には、契約型と会社型があります。契約型は、信託契約にもとづく投資信託のことです。後者は、REITのことです。つまり、日本国内で一般の人が購入できるのは原則、「公募方式による契約型と会社型の投資信託」だけということです。販売会社が一般向けに販売しているファンドは、公募による契約型投信か会社型投信のいずれかです。

契約型投信は、株式投信と公社債投信の2種類あります。株式投信は、株式を組み込むことのできるファンドです。公社債投信は、運用資産が国債や社債など公社債中心のファンドです。株式投信には公社債を組み込んだものがありますが、公社債投信には株式を組み込んだものは、ありません。

株式投信や公社債投信には、それぞれ単位型・追加型、オープンエンド型・クローズドエンド型(「基礎用語」参照)という種類があります。株式投信と公社債投信は、運用資産や種類区分によって、ファンドの内容や性格を知ることができます。

内容・性格は、募集パンフレットに必ず記載されています。「契約型/追加型/オープンエンド/国内株式」とあれば、「信託契約にもとづくファンドで、いつでも購入・払い出しができ、国内株式だけで運用するファンド」ということになります。

内容や性格は、運用ニーズに合致したファンド選びに役立ちます。販売窓口で、ファンドの内容・性格も必ず確認してください。

3要素を踏まえて選択

投資信託と、どう向き合うべきでしょうか。一般にすべての金融商品は、(1)安全性(投資元本の目減り・毀損の可能性はないか) (2)流動性(必要なときに換金できるか) (3)収益性(どのぐらいの収益が見込めるか)―という3つの要素を持っています。

金融商品の選択の際には、3つの要素を踏まえて、お金の使用目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりする工夫が大事です。

子どもの教育資金を株式運用で貯める人はいないと思います。収益性よりも安全性を重視して、預金などの元本保証型の金融商品で貯めていくと思います。

投資信託は、ファンドの運用目的や資産構成から3要素を見ていく必要があります。安全性を重視するなら公社債投信、収益性を重視するなら株式投信、安全性・収益性ともになら分散投資型、流動性を重視するならMMF・MRF―という具合です。

3つの要素の何を重視するかは、運用目的で決まります。投資の前に必ず運用目的を明確にして、最適なファンド選びを心がけてほしいと思います。

余裕資金で投資を

投資信託は、商品選択の前に悩ましい問題が立ちはだかっています。「リスクはいや。だけど、リスクを取らないと収益もない」という矛盾です。矛盾解決の妙案はありませんが、調整方法として、よく指摘されるのが「手元資金の3分割論」です。

3分割論は、手元資金を「すぐ使うお金」と「将来確実に使うお金」、「利用目的のない余裕資金」の3つに分割して、余裕資金の部分を投資信託に振り向ける―という考え方です。

損失が出ても余裕資金の範囲内に止まります。余裕資金の範囲内なら一般の人でも家計に火がつくことはありません。

低い利益率でも大丈夫

運用姿勢も大事です。先に長期保有(長期投資)の大切さについて触れました。長期運用の利点として専門家がよく指摘する点を3つ紹介します。

第一は、1年あたりの費用負担率が下がり、短期売買より収益確保が容易になることです。第2章で、100万円を投資して1年後に換金すると、保有期間中に支払う総費用は4万3千円程度と書きました。これは、投資額の4・3%に相当します。言い換えると年間4・3%以上の利益率でなければ、利益が出ないということです。税金も加味すると、実際にはもっと高い利益率が必要です。

10年間保有すれば、2年目以降は保有時の費用だけです。保有費用を年間1万円とすれば、10年間で10万円です。販売手数料3万円と換金時の信託財産留保額3千円を加算した10年間の総費用は13万3千円となります。

総費用の年平均額は1万3300円で、負担率は1・33%となります。つまり、10年間の利益率の平均が1・33%以上であれば、利益が出るということです。4・3%の利益率確保は難しくても1・33%なら十分に達成可能です。

「ドル・コスト平均法」という投資手法があります。一定額の投資資金で定期的に株式を長期間買い付けていく方法です。株価は、常に変動していますから購入株式数は毎月変化します。

株価の高い時は、購入株式数は少なくなりますが、安い時は多くなります。購入全期間でみると一度に大きな資金を通じて購入するよりも購入株式数は多くなります。これも、第2章で述べた時間の分散=長期運用の効果です。

「時間」の利点 誰もが享受できます

第二は、短期売買の失敗を帳消しにしてくれることです。運用のプロの言葉です。「短期売買は難しい。買い時だけでなく、売り時も当てなければダメだが、両方とも当てるのは不可能」。売買の最適なタイミングを判断するのは、プロでも至難のわざなのです。

相場の上下動は、常に繰り返されます。長期に保有していると、過去の相場下落による損失を、相場上昇による利益で帳消しにすることもありえます。短期売買では、長い時間をかけた相場の上下動を利用することはできません。

第三は、短期投資に比べて収益安定することです。株式の保有期間別に最高収益率と最低収益率の差を調べた調査があります。それによると保有期間10年の場合は、両者の差異は26・1ポイントでした。ところが、保有期間30年になると差異は6ポイントまで縮小しました。

差異が縮小するということは、相場のふれの幅も小さくなって安定的な収益が得られるということを意味しています。第2章で書いた通りふれ幅の減少分だけリスク量も減少するからです。

以上の3点は、「時間」だけに起因する利点です。利点を利用するために、何か特別な才能や豊富な投資経験が必要というわけではありません。誰もが平等に利点を享受できます。

今回のア・ラ・カルトでは、具体的な商品説明はすべて省略しました。「そろそろ私も」とお考えの人は、内容を踏まえて、お近くの販売会社の窓口担当者をぜひ訪ねてみてください。

(記事提供:ニッキンマネー2014年5月号お金のア・ラ・カルト マネーライフの基本)

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