老後の支えリバースモーゲージ

そもそもリバースモーゲージって?

気になる老後のお金のやりくり

いつかは迎えるシニアライフ。主な収入を公的年金に頼る生活が続くなか、一番の心配はやっぱりお金のやりくりでしょう。では実際、シニアライフの収支はどんな感じなのでしょうか。ここでは全国の平均値で見てみましょう。

総務省の「家計調査年報」(2013年平均速報結果)によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上・妻60歳以上)における、1ヵ月あたりの収入は21万4千円。その一方、月々の生活費は、社会保険料の支払いを含め27万2千円かかるとされています。このケースで考えると、毎月の不足額は約5万7千円。シニアライフの期間にもよりますが、基本的には長生きするほどこの赤字は拡大していく計算になります…

いかがですか?これまでしっかり預貯金を蓄えてきた人や、ある程度の退職金が見込める人はともかく、手持ちのお金が少ない人にとっては、ちょっと(かなり!?)心配な金額ですね。さらに、消費増税や今後の社会保障費の膨らみなどを見込むと、いま見た数字からさらに厳しさを増すことは、間違いなさそうです。

自宅に住み続けお金を得る

こうした老後資金に対する不安が現実味を帯びるなか、実際のシニア世代では、持ち家(自宅および土地)を活用した資金づくりを検討する人が増えています。なかでもちょっとした注目を集めているのが、持ち家に住み続けながら、老後に必要なお金を準備することができる「リバースモーゲージ」というしくみです。

このリバースモーゲージは、持ち家を保有するシニア世代を対象にしたローン商品の一種で、一部金融機関や自治体などが取り扱っています。持ち家を抵当(担保)に入れて、その担保評価額の一定の範囲内であれば、いつでもお金を借りたり、年金のような形で定期的に受け取ることができます。また、お金の使い道は基本的に自由なので、生活費の補てんだけでなく、医療や介護への備え、趣味、旅行などの余暇にも利用可能です。金融機関が扱うリバースモーゲージは、比較的まとまったお金を借りることができるため、自宅のリフォーム資金などに利用されるケースも多いようです。

ちなみにローンと聞くと、毎月の返済が気になるところですが、リバースモーゲージの場合、基本的に本人の生存中はお金を返す必要がなく、死亡した時に貸し手が持ち家を売却して一括返済するしくみです(生存中の随時返済も可能)。持ち家という資産を有効活用しながら、シニアライフで不足しがちな手持ち資金を補うことができます。

安心のシニアライフを応援してくれる「リバースモーゲージ」。次のページから、具体的な商品を参考に詳しく見ていきましょう。

「公的」「民間」の2つ 違いをしっかり理解

ここ数年で相次いで取り扱い

リバースモーゲージの歴史は意外と古く、国内では1981年に東京都武蔵野市が導入した「福祉資金貸付制度」が第1号。その後、世田谷区や神戸市など、都市部の自治体を中心に取り扱いの輪が広がっていきました。現在では、厚生労働省が全国の社会福祉協議会を通じた貸付制度を設けているほか、民間金融機関にも拡大しつつあります。

2010年以降を見ると、みずほ銀行、武蔵野銀行(埼玉県)、芝信用金庫(東京都)、世田谷信用金庫などが相次いで取り扱いを開始し、さらには、常陽銀行(茨城県)のような新しいタイプも登場しています。

それぞれの商品性を知る前にまず理解しておきたいのは、公的制度と民間タイプの違いです。自宅を担保にお金を借り入れる点、本人の死亡時に一括返済する点など、リバースモーゲージの基本的なしくみは変わりませんが、その利用目的やサービス内容は大きく異なります。ここでは、厚生労働省の「不動産担保型生活資金貸付制度」と、みずほ銀行のリバースモーゲージを例に比較してみましょう。

福祉か充実か

まず厚生労働省の貸付制度は、低収入高齢者の自立支援を目的とした福祉制度です。そのため利用に際しては、「世帯構成員の年齢が65歳以上」「住民税が非課税」などの要件が設けられており、一定額以上の収入がある人は申し込むことができません。また必要な資金は、1ヵ月30万円を上限に、3ヵ月に1度まとめて受け取る年金形式≠ノなっていて、生活資金の補完的な役割を果たしています。

なおこの制度は、各都道府県の社会福祉協議会が受付窓口になっていますが、名称やしくみはどこも同じです。2007年からは、先の利用条件をさらに緩和した要保護世帯向けの制度も導入しています。

一方、みずほ銀行のリバースモーゲージは、主により充実したシニアライフをおくるためのローンで、相応の金融資産をすでに保有し、かつ、年金などの安定した収入がある人を対象にしています。また融資金額(貸越極度額)も、1千万円〜2億円と高めに設定しているので、それに見合う資産価値の高い持ち家を保有していることも条件です。そのため現状では、持ち家の所在地を東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都4県に限定しています。

ただ、まとまったお金を借りることができる分、お金の使い道は大きく広がります。必要な時にいつでも融資を受けることができますし、一般に数百万円〜数千万円単位でかかる高齢者施設への入居一時金や自宅のリフォーム資金に充てることも可能です。とくに、「持ち家を子どもにのこさず、自分のために使いたい」「独身で相続人がいないため、自分の代で資産を使い切りたい」と考えている人にとっては、有効な選択肢のひとつと言えそうです。

マンションは基本的に対象外

将来、リバースモーゲージの利用を検討する際、いくらまで借りられるかが気になるところでしょう。そのカギとなる「担保評価額」について、確認したいと思います。

一般に、金融機関が融資を行う際には、借り手が万一、返済不能になっても貸したお金をきちんと回収できるよう、土地などの担保を求めます。ただ土地の価格は時々の市況によって変化するため、確実に♂収できなくなるおそれが出てきます。このため各金融機関では、時価から一定の掛け目を乗じて出た金額を担保評価額に設定しているわけです。一般には「70%」に設定しているところが多く、時価3千万円の土地でしたら単純に2100万円が担保評価額となります。

ただしここで注意したいのは、「担保評価額=融資金額」ではないということ。一般には、担保評価額×50〜70%で設定されているため、先の例でいくと最大1050万円(金利負担分を除く)まで下がる可能性があるわけです。そのため、自分が想定していたよりも、実際の融資金額が大幅に低くなることがありえます。

また一般に、担保の対象は「土地付き一戸建て住宅」(そもそも土地だけでは、融資を受けることができません)となっていますが、建物は担保評価が難しく、かつ低額になることが多いため、評価の対象外としている金融機関が大半です。マンションも同ように、一部金融機関を除いて対象外ですから、よく注意しておきましょう。

担保評価の理解は欠かせません

実はもうひとつ、リバースモーゲージをより深く理解するにあたって、この担保評価額が大きな意味を持ちます。

もう一度、ローンの返済方法を思い出してください。「本人の死亡後、貸し手(金融機関など)が持ち家を売却し、その資金を返済に充てる」しくみでした。ではもしその間に、地価が大きく下落してしまったらどうでしょう。当然ですが、金融機関は貸したお金をきちんと返してもらえなくなる可能性が高まります。

そのため金融機関では、定期的に担保評価額を見直し、それに応じて融資金額を減らすなどの調整を行います。ただここで気を付けたいのは、担保評価額よりも借りたお金のほうが大きくなった場合です。この対応は金融機関によって異なりますが、一般には新たな借り入れができなくなるほか、超過分の一括返済や追加の担保徴求などの措置が取られます。

とくに地価が大きく上昇し、担保評価額が上がった後は要注意。その勢いでお金を使いすぎ、のちに返済に困ることも十分考えられます。また、もし売却後に負債が残れば、その穴埋めは原則、のこされた相続人が行うことになります。その点も留意して、計画的な利用を心がけましょう。

「売却しない」新しいカタチ

ここまでは、一般的なリバースモーゲージのお話でしたが、近頃その新しいカタチが登場し、ちょっとした話題を呼んでいます。常陽銀行が取り扱いを始めたリバースモーゲージで、持ち家を賃貸に出して老後資金を準備するしくみです。マイホームの売却を前提としない家賃返済型≠フリバースモーゲージとしては、全国の金融機関初めての取り組みです。

具体的な特徴は右の囲みの通りですが、このしくみを活用すれば、安定した賃料収入を得ることができ、高齢者施設への入居や住み替え先の購入、趣味・旅行など、シニアライフを充実させるための資金として役立てることができます。

このように、お住まいの地域や家計の状況、将来マイホームに住み続けるか否かなどで、具体的な商品選択は大きく変わります。その点を踏まえ、慎重に検討してみてください。

大切な家だからこそ活用法をきちんと考える

注意点をもう少し

ここではもう少し、リバースモーゲージの注意点について見ていきましょう。

人にとって長生きは、本来喜ばしいことですが、リバースモーゲージを利用する際には、時として大きなリスクとなります。基本的に生きているうちは借金を返さないわけですから、時が経つほどその残高は積み上がっていきます。借入金額が借入可能額を上回れば、超過分を返済しない限り、基本的に新たな融資を受けることはできません。これは、定期的に資金を受け取る「年金型」も同ようです。普段は「借金をしている」という感覚が乏しくなりがちなだけに、この点はまず心にとどめておく必要があります。

また、どのリバースモーゲージもそうですが、市場の金利動向によって適用金利が見直される「変動金利」です。融資金額は、数年おきに行われる担保評価額の見直しにあわせ、この金利分を割り引いて再計算されます。つまり金利が上昇すれば、その分、借りることができる金額も目減りしてしまいます。月並みな言い方ですが、「余裕を持った借り入れ」が大切なのは、そのためです。

こうした心配を回避するための方法として、生存中に借金をある程度、返済しておく手があります。リバースモーゲージの基本は、死亡後の一括返済ですが、実はどの金融機関も随時返済を受け付けています(繰り上げ返済手数料がかかる場合あり)。

また金融機関によっては、定期的に利息を返済する方法と、利息を返済せずに借入金額に上乗せする方法のどちらかを選択できるところもあります。もちろん前者を選べば、借入金額の増大を抑えることができるので効果的です。

生存中の返済は、リバースモーゲージ独自のメリットを薄める形にはなりますが、万一のことを考え、こちらも念頭に置いておきたいところです。

より使い勝手のよいしくみに

現在、政府主導のもと、中古住宅市場の活性化に向けた様ざまな準備が進められています。そのひとつとして、中古住宅の価値を適切に評価するしくみの整備が今後本格的にスタートする予定です。こうしたしくみが軌道に乗れば、現在、建物を担保評価の対象外としている金融機関の見直しが期待され、リバースモーゲージがより使い勝手の良いしくみに生まれ変わるかもしれません。

いかがでしたか。シニアライフはもうすぐ。FPの久保田さんのアドバイスも参考に、リバースモーゲージを活用したシニアライフの上手なすごし方を検討してみてください。

FPに聞きました 久保田 正広さん

くぼた・まさひろ

株式会社FPバンク代表。AFP、
住宅ローンアドバイザー

リバースモーゲージとは、こう付き合おう

お客さまとの相談業務の中で、リバースモーゲージに関する質問が徐々に増えてきていますが、まだしくみが浸透していないせいか、「シニア世代はローンなんて利用できない」「自宅を必ず取られてしまう」と勘違いしている人が多いのが事実です。ただ実際には、ローンを完済すればそのまま住み続けることができますし、本人が亡くなった後でも、自宅を売却せずに配偶者が暮らし続けられる方法もあります。

確かにシニア世代は融資を受けづらい環境ですが、その中でもリバースモーゲージは、シニアライフを満喫するための大きな武器になります。これからシニア世代を迎える方に関しては、まずその特性をよく知り、そして、ご家庭でどう活用できるのかを確認していただきたいと思います。

では、実際にどんな活用方法があるのか、お客さまの事例を紹介すると、自宅のリフォーム資金として利用したり、争族対策≠ニしてお金を借りて、それをお子さんに分配するといったケースが多く見受けられます。もちろんこれ以外にも、病気や認知症に伴う介護問題など、シニア特有の差し迫った出費で利用する方もいらっしゃいます。こうした事態は突然やってくるので、事前に想定することは難しいでしょうが、リバースモーゲージの活用を視野に入れれば、対策の選択肢は広がるはずです。

ただ将来、リバースモーゲージを利用する際には、奥さまやお子さんの意向はしっかりと確認してください。愛着のあるマイホームを最終手段としては手放すことになるわけですから、ご自身の独断で決めるべきものではありません。ご自身の亡くなった後も、奥さまがその家に住み続けたいと考えているのであれば、リバースモーゲージの利用額は抑えるべきでしょうし、負債が残れば相続人であるお子さんに負担をのこすことにもなりかねません。

いずれにしても、リバースモーゲージを上手に活用すれば、経済的・精神的な安心感は得られるはずです。その点もよく考慮してみてください。

(記事提供:ニッキンマネー2014年5月号 特集Ⅱ)

「むさしのリバースモーゲージ」はこちら

このページの先頭へ