夫婦で知りたい 産休&育休

子育ては大事、でも仕事も…

男女の育休取得率を比べてみると…

3年間も休めるの?

2013年の春に安倍晋三首相が、育児休業の期間を"3年"に延長すると表明しました。その実現はまだ不透明ですが、「3年間抱っこし放題」との発言には、世間から様ざまな声が上がりました。

でも、本当にのんびりと3年間、子育てに没頭できるものなのでしょうか…。それよりも、男性の育児休業の取得が広がっていないことのほうが、女性にとっては気になるところかもしれません。

現在の日本には、出産・子育て期のサポートとして「産休&育休」の制度があります。3年とまではいきませんが、公的な所得支援を受けながら、会社を辞めずに子育てできる制度です。でも、そのしくみは少々複雑で、どのくらい仕事を休むことができるのか、いくら収入をサポートしてもらえるのか、職場復帰のタイミングと課題など、どれも出産の機会を迎えるまでに知っておきたいことばかりです。妻だけでなく、夫やその家族も制度を正しく理解して、みんなで出産という大仕事の負担を分かち合いたいものです。

産休、育休、そして時短

子育てを迎えるにあたって、まず知っておきたいのが、産休と育休、つまり出産や子育て期間に設けられた、会社を休めるしくみの正しい理解です。

"産休"は産前産後休暇の略称で、労働基準法で決められている、出産前後に取得できる休暇期間のことです。会社は、6週間(多胎妊娠の場合14週間)以内に出産予定の女性が休業を申し出た場合、その人を働かせることができません。また産後についても8週間を経過しない限り就業させることができません(産後6週間を経過した女性が復職を希望した場合は条件に応じて可能)。

一方の"育休"は育児休業の略称で、育児介護休業法で決められている育児期間内に取得することができる休業期間のことです。その期間は、原則、子どもが1歳に達するまでで、任意の期間を取得することができます。また特別な事情がある場合は、1歳6ヵ月まで延長することができます。

産休が取得できるのは女性だけですが、育休の取得は男女を問われませんので、夫婦で取得することができます。「パパ・ママ育休プラス制度」といって、夫婦で育休を取得する場合、原則子どもが1歳までの休業期間を、1歳2ヵ月まで延長することができます。

さらに職場復帰後も、3歳未満の子どもを養育している場合、会社は勤務時間を短縮するなどの対策をする決まりになっています(3歳から小学校就学前の子どもを養育する場合も、育児休業や時間短縮などに準じた措置を講ずるよう努めなければならないことになっています)。

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妊娠から職場復帰まで

3つの収入サポート

産休&育休は、あくまでも法律で定められている労働者の権利としての休業期間をさしたものです。この法律上の休業期間を超えて、さらに長い育休期間を設けている企業も少なくありません。

でも心配なのは、この休業中の収入をどう確保していくかという点でしょう。一般に産休&育休の期間は、仕事を休むことが認められるものの、給料については、支給されないか、あるいは減額されてしまうことが一般的です。こうした出産・育児期の収入減を補うため、公的には、大きく3つの制度が用意されています。それが「出産手当金」「出産育児一時金」「育児休業給付金」です。

下の図表は、それぞれの制度で受け取ることができる金額、対象者、諸条件をまとめたものです。見ていただくとわかるとおり、出産手当金は、健康保険から産休期間中に支払われるもので、会社で働き、健保組合や協会けんぽに加入している人が対象になります。出産育児一時金も同じく健康保険から支払われるもので、働いている人だけでなく、働いている人に養ってもらっている人に対しても支払われます。育児休業給付金は、雇用保険から育休期間中に支払われるもので、会社で働き雇用保険に加入している人に支払われます。

育児休業給付金は働く男女が受給できますが、出産手当金は働く女性しか受給することができません。また出産手当金は、国民健康保険の場合は支給されませんのでご注意ください。

賞与はノーカウント

ざっくり見ると、出産前後の休暇に関しては、休暇前の給料の3分の2が、出産にかかる費用については42万円が、原則子どもが1歳になるまでの休業期間中は、休業前の給料の半分が支払われることがわかります。

給料の3分の2、半分と聞くと、休業に伴う収入減をなんとかカバーできそうですが、この計算の基準に賞与は含まれません。このためボーナスが支払われない場合は、予想以上の収入減になることを知っておく必要があります。

また諸事情で出産を機に退職を選択する女性もいるでしょう。注意したいのは、その際、出産手当金や出産育児一時金が支払われるのかどうかという点です。在勤中、健康保険に加入していても、退職のタイミングによっては受け取れない場合もあります。

たとえば出産手当金の場合、産休取得前に退職していた場合は受け取ることができません。

組み合わせは様ざま

子育ては女性だけでするものではありませんので、育児休業については男性も取得することができ、期間も2ヵ月間、延長されます。夫が取得した場合も、もちろん取得した期間に応じて育児休業給付金が支払われます。

また育児休業は、連続して1回でとるのが原則ですが、妻の出産後8週間以内に夫が育児休業を取得し終了した場合、特例として再度の育児休業を取得することが認められています。このため育児スタイルに応じて、様ざまな夫婦の協力体制を築くことができます。図表は一例ですが、交互ではなく、期間を重複して取得することもできます。その場合も期間に応じて、それぞれに給付金が支払われます。

産休・育休期の制度のイメージ

産前休業開始

産前休業開始 42日〜56日 出産手当金(健康保険)

出産

産前休業開始 56日〜 出産育児一時金(健康保険)

産後休業終了

育児休業開始

原則、子どもが1歳になるまで 育児休業給付金(雇用保険)

原則、子どもが1歳になるまで パパ・ママ育休プラス

育児休業終了

家計は大丈夫?

収入減をイメージ

女性の社会進出に伴い、産休&育休を取得する人の数は、年々増加傾向にあります。

ただ日本の企業文化の影響か、男女差に大きな隔たりがあるのが実情です。厚生労働省の調査によれば、女性の育児休業取得率が8割以上なのに対し、男性は1.89%。さらに出産前に仕事をしていた女性の約6割が出産を機に退職している現実があり、依然として育児の負担が、女性に多くのしかかっている構図が見て取れます。

女性が仕事と子育てを両立させるには、まずは男性が育児に参加し、パートナーの負担軽減を図ることが大切でしょう。

加えて出産・育児期の家計収支を、正しく把握しておくことも大事なポイントです。すでに見てきたとおり、休業期間中は、休業前の給料の7割弱から半分程度に収入が減りますし、復帰後の保育料などの負担にも目を配る必要があるでしょう。会社によっては子どもが1歳を超えても育児休業を取得できる場合もありますが、この間に、手当があるとは限りません。収入減を具体的な数字でイメージしてみてください。

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知っておきたいこと

具体的な数字をつかむ上で、ぜひ知っておきたいのが、手当金・給付金以外の間接的な収入の存在です。実は、育休中は厚生年金・健康保険の保険料が免除されます。しかも休業期間中も、休業前の給料を基準に保険料を収めたことになります。

ですので、ただ年金資格期間にカウントされるだけでなく、免除期間に応じた分が将来の年金額に反映されますし、健康保険のサービスも通常どおり受けることができます。

この免除期間は、育児休業の開始月から、最長で子どもが3歳に達するまで適用されます。公的な育休期間のほか、企業がそれに準じる制度を設けていても、3歳になるまでの休業期間中は、保険料の免除が認められるわけです。

さらに2014年4月以降は、産休の期間も免除期間の対象に加えられます。

これとは別に、出産後は児童手当が支給されることも頭に入れておきましょう。0〜3歳未満までは一律で1万5千円が、3歳から小学校修了までは第1子、第2子は1万円、第3子以降は1万5千円が支給されます。

ちなみに休業を取得しても、ボーナスをもらえる場合があります。賞与算定期間内の一部が産休・育休中だったとしても、その他の期間で勤務実績があれば、たとえ賞与の支給日が休業中だったとしても、勤務期間日数に応じた賞与は受け取れます。

FPに聞く 子育て期の家計対策 氏家祥美さん

うじいえ・よしみ

ハートマネー代表、一般社団法人キャリア35理事。
1972年生まれ。立教大学卒。FP会社勤務を経て、2010年に独立。

「貯め方」「働き方」を得意とし、女性や共働きファミリー向けの家計相談やセミナーなど幅広く活躍

働き続けるコツ
夫婦で数字を共有して

出産・育児の期間は、生活の変化に加えて収入も減り、不安なことが多いかと思いますが、実は家計が本当に厳しくなるのは、職場復帰した後です。ここで働き続けることを断念してしまう女性が多いのですが、一度、仕事をやめてしまうと、将来、同じような待遇の仕事に復帰することは難しく、家計収支を長い目で考えると、せっかくのキャリアを失ってしまうのは、本当に残念なことだと思います。

育休中は、おおまかに収入が休業前の半分になってしまうわけですが、家庭内で子育てに集中できる分、働いているときよりも節約が可能で、「意外と家計は大丈夫」との声をよく聞きます。むしろ覚悟したいのは、育休があけて職場に復帰した後の時短勤務の生活です。時短勤務で収入が少ない一方、保育料の負担がかかるのが、その主な理由です。認可保育所でみると、その保育料は子どもの年齢と親の所得税額で決まります。とくに0歳から3歳未満までの負担が大きく、高い場合、月額で6〜7万円もかかる場合があります(3歳以降は金額も下がります)。このため、職場復帰後は一気に支出が増えて、戸惑う人が少なくありません。せっかく働いて得たお金の多くが保育料や関連費に消えていく現実を知り、「働いても意味がない」と仕事をあきらめてしまう女性が少なくないことも事実です。

相談業務の中で、そんなご家庭に対しては、3歳以降に目を向けて、厳しい期間を乗り切ってほしいと伝えています。3歳になれば、保育料も安くなり、フルタイムの勤務に戻れる可能性が高まりますので、家計はグッと楽になります。それまでの期間は、貯蓄をお休みする、あるいは蓄えを取り崩して家計を維持することも、やむを得ないことだと思います。それでも仕事を継続するメリットは大きく、この時期に仕事をやめて専業主婦で過ごす場合と、仕事を継続する場合を比較してみると、生涯賃金で億円単位の差が出てきます。

育休後に妻が仕事に復帰できるかどうかは、夫の協力が大きくかかわってきます。コツは、妻が仕事に復帰し働き続けることのメリットを具体的な数字(金額)で理解し、夫婦で共有することだと思います。ぜひ夫婦で協力して、働き続ける選択をめざしていただければと思います。

氏家さんからワンポイント

「彼氏ができたら医療保険」

最近、若い世代で無保険の人が増えているように感じますが、女性には、妊娠する前に医療保険に加入することをお勧めします。切迫流産・早産や帝王切開など、出産にからむトラブルに見舞われた場合、公的医療保険だけでなく、民間の医療保険の給付対象にもなります。通常よりも高額な費用がかかるだけに、出産は、若い女性が民間の医療保険をもっとも頼りにしたい機会といえるでしょう。でも妊娠してからでは、医療保険に加入できないか、できても妊娠に伴う手術や入院が給付の対象外となってしまう可能性もあります。安心して出産を迎えるためには、早めに医療保険に加入しておくことが大切です。生涯を共にしたい彼氏に出会ったら、ぜひ医療保険についても考えてみてください。

(記事提供:ニッキンマネー2014年4月号 特集Ⅰ)

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