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連載コラム【お金の世界の歩き方】
~第41回 個人向け国債~
先生
「花子さん、今日はなんだかニコニコしていますね」
花子
「わかりますか!実は昨年末にいただいたボーナスをしっかりと仕訳したことで、計画的に使うことが出来ました。そうしたら、お金も当初の予定よりも余ったので、どのように振り分ければ有効的な運用ができるのかしら、と考えていたんです」
先生
「それは大したものです。やはり、ボーナスなどはきちんと仕訳をすることで、効率的に活用をすることができるのです。では、今日は今まであまり話をしなかった国債について紹介したいと思います」
花子
「よろしくお願いします」
先生
「花子さんは、今の普通預金の金利は覚えていますか?」
花子
「はい、覚えていますよ。0.001%です。この金利だと『72の法則』を使って預けたお金が倍になる年数を計算すると、72,000年になるんでしたよね。この数字はインパクトがあったので覚えています」
先生
「72の法則まで覚えているのは流石です。では、スーパー定期の金利はどれくらいかご存知ですか?」
花子
「定期預金というのは普通預金よりも金利は高いですよね。うーん、0.01%ぐらいですか?」
先生
「ちょっと違いますね。実は0.002%です。普通預金の倍にあたります」
花子
「たしかに、普通預金の倍なのかもしれませんが・・・私のような利用者であれば0.001%と0.002%では金額にすると差は感じません」
先生
「そうかもしれませんね。そこで、今回はもう少し金利のよい国債について紹介しましょう」
花子
「是非、教えてください」
先生
「花子さんは『国債』とは何かわかりますか?」
花子
「債券というのはお金を借りた時の借用証みたいなモノで、国がお金を借りる時に発行するのが国債ではありませんか?」
先生
「よく覚えていましたね。その通りです。国が発行する債券は国債、会社が発行する債券が社債といって、いずれもお金を借りる際に発行する借用証のようなものです。では、国債と社債だとどちらの信用力が高いと思いますか」
花子
「それは国債ではないでしょうか。その国自体が発行する債券ですから」
先生
「その通りです。日本の場合も国債の信用力は高いです。その国債ですが、花子さんのような個人の方向けにも発行されており、『個人向け国債』といって、個人専用の国債です。ですから、少額から購入できるようになっています」
花子
「少額と聞くと投資信託を思い出すのですが、もしかして投資信託と同じくらい、1万円前後から購入することができるのですか?」
先生
「花子さん、良い勘していますね。個人向け国債は1万円から1万円単位で購入することができるのです」
花子
「当たりですね。1万円から購入できるというのは、購入しやすいですね」
先生
「また、個人向け国債には、2種類の金利があります。それは『固定金利型』と『変動金利型』です。『固定金利型』というのは満期まで同じ金利が適用されます。『変動金利型』というのは半年ごとに金利の見直しが行われ、その時の金利水準によって適用される金利が変わります」
花子
「そうなのですね。でも、固定だとこの後に金利が上昇しても、その恩恵を受けることはできませんよね。かと言って、新型コロナウイルスの感染拡大で景気が悪くなるのであれば、金利は低下しそうだから変動もどうなのかなと思うし。迷いますよね」
先生
「実は固定金利型も変動金利型も今は最低保証金利の0.05%なんですよ。つまり、最低の金利水準ということなのです」
花子
「それなら、変動金利型の方がいいのでしょうか?」
先生
「現在が最低保証金利ということであれば、変動金利型を選択するのが良いとは思います。というのも、ここからマイナス金利が続いたとしても金利は低下しませんし、逆に景気が良くなって金利が上昇することになれば利率も上がる可能性があるからです。ただし、もう一つ考慮しなくてはならないのは期間の問題です」
花子
「保有する期間に違いがあるのですか?」
先生
「そうなのです。変動金利型の満期は10年、固定金利型は3年と5年となっています」
花子
「変動金利型の10年というのは長いですね。10年の満期がくるまで待たなくてはならないというのはちょっと辛いかも。万が一お金が必要になった時に、現金にできないのはリスクがありませんか?」
先生
「そこはちょっと違います。債券や株式といった直接金融の商品は換金できる仕組みが用意されています。というのも、換金が出来ないと投資家の皆さんは買ってくれませんから」
花子
「満期が来る前に換金できるのですか?」
先生
「はい、できますよ。通常の債券も満期を待たなくても換金することが出来ます。ですから、債券市場というのがあり売買される、つまり、債券にも債券価格というのがあるのです。ですが、ここにも個人向け国債の特徴があります。個人向け国債は購入から1年を経過すると途中で換金することができ、その際の価格変動による損失は発生しません。元本の価格変動がないのです。ただし、途中で換金する場合には、税金を引かれた直前の2回分の利息が取られます」
花子
「個人向け国債というのは、少額から始めることができ、今の低金利時代のなかにあっても普通預金等よりは利率が高めで、換金もできるのですね。国の発行だから安心できるし、なんだか良いことづくめですね。ボーナスで余ったお金の運用として検討してみます」
『武蔵野 花子』プロフィール
埼玉県内に住む33歳の女性。
パートタイムで働いており、家族は会社員の夫・長女(小学校1年生)・長男(幼稚園)がいる。最近よくママ友と子供の教育費や、家の購入について話すことが多く、これからのお金の使い方について、どうすればいいのかわからず悩んでいる。
『川口先生』プロフィール
証券会社や銀行を経て、現在は金融ジャーナリストとして活躍している。武蔵野家の近所に住んでいて、悩める花子に対しお金についていろんな角度から話をしてくれる。
趣味はスポーツで、ゴルフが得意だそう。また、社会人になってから始めた空手も黒帯である。
執筆:川口一晃