戻る 連載コラム【お金の世界の歩き方】~第16回 金融の動きをチェック~
花子
「先生にいろいろ教えていただき、最近はニュースなどを観るのも楽しくなってきました。ところで、今回はお金の動きをもう少し詳しく知りたいと思っているのですが、お金の動きを見ていく上でポイントというのはありますか?」
先生
「いいですね。花子さんのような人が増えてくれると、日本の未来も明るいですよ」
花子
「えっ、そんな大げさな」
先生
「本当ですよ。日本人の金融や経済に関する知識や判断力というのは外国に比べて相当低いのです。アメリカの小学生が勉強するテキストが日本の大人が勉強するテキストと同レベルとも言われています。ですので、花子さんのように金融に興味を持ってくれる人が増えるのは大変良いことなのです。それでは、今回はお金の動き、いわゆる金融の動きをチェックしてみましょう」
花子
「よろしくお願いします」
先生
「まず、金融を勉強する上で、是非、押さえておいていただきたい重要なポイントがあります。それは何だと思いますか?」
花子
「うーん、漠然としていてよくわからないのですが、お金の知識や金融商品の知識などでしょうか」
先生
「それも大切ですが、実は『金利』なのです。『金利がわかれば金融がわかった』と言っても過言ではありません」
花子
「金利・・・?何%とかそういう話ですか?」
先生
「何%などという水準ではなく、金利の動きと言った方が良いかもしれません。まず『金利とは何か』から説明しましょう。
ずばり、金利というのはお金を預けたり、貸し借りをした時のお礼です」
花子
「お礼ですか?」
先生
「はい。人からモノを借りた時にはお礼をしますよね。例えば、海外旅行に行くときに友人からキャリーケースを借りたら、返す時にはお土産を渡すでしょう?」
花子
「そうですね」
先生
「それと同じで、銀行などからお金を借りた時のお礼はお金で払います。ただ、基準がないとどれくらいお礼をすれば良いのかわかりません。そこで、お礼の水準を表す金利が存在するのです」
花子
「なるほど!」
先生
「そして、大事なポイントは『金利が動けば世の中のお金が動く』ということです」
花子
「どういうことですか?」
先生
「例えば、花子さんがいつも使っているA銀行の預金金利が0.1%で、普段全然使っていないB銀行の預金金利が1.0%だった場合、花子さんはどうしますか?」
花子
「それは、すぐにでもB銀行にお金を移しますよ」
先生
「そうですよね。
また、お金を借りる場合は、少しでも金利が低い銀行で借りようとしますよね。
それと同じように、金利の高い低いによって世界中のお金の流れが変わるのです」
花子
「ところで、金利はどういう時に動くのですか」
先生
「良い質問ですね。実は景気がカギとなります。
景気が良い状態というのはどういう状態を思い浮かべますか?」
花子
「そうですね、皆が元気に生きている!という感じですね。あとは・・・買い物をする人が多いので、町も活気に溢れているイメージです」
先生
「そうですよね。多くの人がモノを買いますので、会社もたくさんのモノを作ります。業績も上がるので働く人のお給料も上がります。街の中にたくさんのお金が出回ります。そしてまた多くの人がモノを買います。このようにモノに対する需要が高まるとジワジワとモノの値段が上がっていきます。つまり、物価が上昇し始めるのです」
花子
「なるほど」
先生
「でも、物価の上昇が大きくなると、逆に私たちはモノを買えなくなってしまいます。そこで、日銀は金利を引き上げます。金利が上がると金融機関にお金を預ける人は増えるし、会社も高い金利を払ってまでお金を借りようとはしません。そうすると消費に向かうお金の量は・・・」
花子
「お金の量ですか?うーん、増えないというか、少なくなるということですか」
先生
「はい、そうです。消費に向かうお金の量が減りますので、物価の上昇を抑えることが出来るのです」
花子
「そうか、金利と景気と物価というのは密接な関係にあるのですね。
ところで、景気が良いのか悪いのかはどこで判断すればいいのでしょうか」
先生
「それはいろいろな機関から発表される経済の指標がヒントになります。例えば『日銀短観』です。これは1年に4回発表されるのですが、約1万社へのアンケートを通じて、景気の善し悪しのヒントを得ることができます」
花子
「日銀短観というのは私も聞いたことがあります。たまにニュースで話していますよね」
先生
「はい。新聞などにも載っていますので見てみてください。
それと株式市場などの金融マーケットのチェックもしてみてください」
花子
「マーケットですか・・・なんか難しそうです」
先生
「そんなことないですよ。例えば、株式市場ですが、株価が全体的に上昇しているのであれば景気は良くなってくる、逆に株価が下落しているのであれば景気は悪くなってくると考えられます」
花子
「それは何故ですか?」
先生
「仮に、景気が良くなっていくのであれば会社の業績はどうなりますか?」
花子
「良くなっていきますよね!」
先生
「その通りです。会社の業績が良くなっていくのであれば、株価も上昇していくことが期待できますよね。ですから、景気が良くなりそうだと期待する人が増えると、実際の景気よりも一足先に上昇していきます。これは、投資家が『これから景気が良くなりそうだから株を買っておこう』とか、『将来値上がりしそうだ』といった予測に基づいて取引をすることが多いためです」
花子
「そういうことなのですね。株式市場の動きを見るだけでも景気の善し悪しを判断できるのですね」
先生
「はい。金融の動きをチェックする重要なポイントは、まずは金利です。そしてその金利に影響を与える景気、物価に注目してください。マーケットの動きが景気を見る上でもヒントになります。」
先生
「投資信託などを購入する場合も、このような情報を見たうえで判断をしていくと、より安定的な運用ができると思います。銀行の窓口に相談すれば、その時々の情報を教えてくれますよ」
花子
「そうなんですね!いろいろなものが関係しあっているというのがわかりました。
ありがとうございます」
『武蔵野 花子』プロフィール
埼玉県内に住む33歳の女性。
パートタイムで働いており、家族は会社員の夫・長女(小学校1年生)・長男(幼稚園)がいる。最近よくママ友と子供の教育費や、家の購入について話すことが多く、これからのお金の使い方について、どうすればいいのかわからず悩んでいる。
『川口先生』プロフィール
証券会社や銀行を経て、現在は金融ジャーナリストとして活躍している。武蔵野家の近所に住んでいて、悩める花子に対しお金についていろんな角度から話をしてくれる。
趣味はスポーツで、ゴルフが得意だそう。また、社会人になってから始めた空手も黒帯である。
執筆:川口一晃
※本コラムを執筆されている川口一晃氏がナビゲーターを務める、当行提供ラジオ番組「お金の世界の歩き方」毎週月~木曜日7:04からNACK5にて絶賛放送中!当行行員も出演していますので、ぜひお聴きください!聴き逃してしまってもラジオが聴けるアプリ「radiko.jp」にて1週間までさかのぼって聴くことができます!